【砂の城】インド未来幻想
 元気なシュリーの笑顔が無意識にナーギニーを頷かせていた。太陽の光が彼女の背を(まと)い、そのシルエットが(まばゆ)(かたど)られていく。それはまるで昨夜のあの月光に照らされた優しい青年と重なり合って思えた。やがて見つめるナーギニーの(おもて)にも、少しずつ笑みが戻ってくる。

 ナーギニーの弱々しい掌はゆっくりと目の前の指先に近付き、触れた途端引き寄せられ、あっと言う間に勢い良く立たされた。

 いつの間にか力強く握り締めていたのはナーギニーの方だった。あたかも運命を導く大きなエネルギーが、シュリーから与えられ注がれたような、不思議な流れが彼女の中を駆け巡っていた――。



[註1]菩提樹:仏教に馴染みの深い樹木ですが、実はヒンドゥー教にも神話上に繋がりがございます。



◆以降は2015年に(他サイトにて)連載していた際の後書きです。

 前話後書きにサリーとパンジャビ・ドレスの画像を入れました。作者所有の衣装ですが、モデルは友人・知人です☆


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