【砂の城】インド未来幻想
「何と美しい……」

 シャニは足下で繰り広げられる素晴らしい芸術に、つい隣の王妃のことも忘れて、言葉を洩らし目を見張った。

 全身を夕陽色に統一した可憐な衣装と、白く透き通る肌に寄り添うような黄金の装飾。それらと相対するように流れ舞う漆黒の髪と潤んだ大きな瞳。表情はまだ強張(こわば)ってぎこちなかったが、あのあどけなさを含んだ無垢な面差しが、自分を見つめて微笑んだらどれほど麗しいだろうか。それこそこの舞台を照らす夕陽にも負けないくらいの優美さに違いない。

 シャニはもとより、辺りはナーギニーに心奪われた観客達で埋め尽くされていた。闇の立ち込め始めた舞台四方には、いつの間にか松明(たいまつ)が灯されている。炎と人々の興奮で、この場の大気と大地は異常な熱を帯びていた。そして終わりを告げる笛の()が鳴り響く数秒前、最後の回転に臨もうとしたその時、事件は起きた――


 ――起きてしまった――。


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