婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

 フィル様は私の顎に指を添えて、視線を合わせる。
 空色の瞳の奥に激情の炎をたぎらせ囁いた。

「ラティ、僕は君を愛してる。君だけを愛してる。だから僕のものになるって誓って」
「……っ!!」

 今までフィル様は一度も口にしなかった。
 なによりも私が聞きたかった言葉。
 やっと『愛してる』と言ってくれた。

 私の心は歓喜であふれ、視界がにじんでいく。

「僕だけのラティになってくれる?」
「……は、い」

 フィル様の唇がそっと近づき、私に重なった。

 ワッと歓声が上がり、ここは外だったと思い出す。フィル様の愛の言葉を聞けて、すっかり舞い上がっていた。
 過去最高に赤くなって、全身から変な汗が吹き出している。

 フィル様はにこやかに周りに手を振り、歓声を落ち着かせた。この図太い神経が羨ましい。

「さて、それでは早速結婚式について周知しよう」
「え? 結婚式?」
「一年後に結婚式を挙げることにした! 詳細は追って知らせる!!」

 さらに国王陛下そっちのけで、私たちの結婚式の公示をしてしまった。これは、どこから突っ込んだらいいのだろうか?

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