婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

 臣下の前での婚約破棄は別にどうでもいい。
 そんなことで僕の評価が変わるほど、薄っぺらい仕事はしていない。

 あんな傲慢な皇女と縁が切れてむしろよかった。見た目だけの中身の伴わない女と添い遂げる必要がなくなって、むしろホッとしている。

 ただ自由すぎる皇女に振り回され、残務処理も重なり僕は疲れ果てていた。

 そんな時にお忍びで視察に出た先で毒を盛られた。前回の視察で、劣悪な環境の孤児院をテコ入れして、その孤児院の子供たちからお礼だと焼き菓子をもらった。

 子供たちがキラキラした目で食べるのを期待していたからひと口食べたけど、その後からどんどん具合が悪くなっていった。そこで焼き菓子に毒を仕込まれたのだと気が付いた。

 お忍びの時は変化の魔法を使っているから、僕が王太子だと誰も知らないはずだ。それでもこんなにピンポイントで狙ってくるなら、僕が変化の魔法を使っているのを知る人物となる。

 さらに僕が死んで得する人物となればすぐに突き止められそうだ。僕はすぐにアイザックへ調査と秘密裏に処理するよう命じた。この国で正面切って僕を殺せる人間なんていないから、割とひとりで行動することも多い。この時も単身で王城へ戻るつもりだった。

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