婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

「すごいです、どれも私好みです!」
「それはよかった。ああ、ちなみに——」

 フィルレス殿下はホッとしたように微笑んで、部屋の奥の扉を開きながら言葉を続ける。

「こちらの扉は僕たちの寝室につながっている」
「え? ()()()()()()?」
「僕の専属治癒師だし、もし就寝中になにかあっても対応できるようにしておいたんだ」
「はあああああああああ!?」
「あははは、ラティシアの反応は面白いな。これからもそのままで頼むよ。あ、寝室の奥の扉は僕の私室につながっていて、一応鍵はかけられるから安心して」

 あまりの事実に開いた口が塞がらない。

 二十四時間勤務のうえ、寝室も腹黒王太子と一緒なんて気が休まる時がないではないか!!
 それにフィルレス殿下の私室につながってるって、つまりここは王太子妃の私室じゃないの——!!
 そもそも結婚前の男女が寝室を共にするということだってあり得ないから!!!!

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