【辛口ホームドラマ】チャーミー(平成30年台風24号災害)

【甘やかされた末に…】

時は、6月4日の午前11時頃であった。

ところ変わって、北日吉町にある西路見《さいろみ》の夫婦が暮らしている特大サイズの和風建築の家にて…

家の16畳《じょう》の和室に、かおると西路見夫婦《さいろみふうふ》の3人がいて話し合いをしていた。

この日、かおるは私立高校《メートク》から呼び出されたので高校《ガッコー》へ行く予定であった。

あつこは14年間…

てつやは13年間…

…に渡って高校《ガッコー》に行けない状態がつづいていた。

高校側《ガッコーがわ》は、あつことてつやが再び高校《ガッコー》に来る日を待っていたが、もう限度が来たようだ。

10年以上も高校《ガッコー》に来ないあつことてつやを除籍《ついほう》した方がいいのではないか…

高校《コーコー》へ行きたいのであれば、よその高校《ガッコー》へ移ればいいのに…

…………………

高校側《ガッコーがわ》の9割9分は、これ以上あつことてつやにいてほしくない…と言う意見を唱えていた。

また、あつことてつやが私立高校《ほんこう》に居座り続けているので保護者《せいとのおや》たちは、集団で上京した…と言う話しが入った。

保護者《せいとのおや》たちは、6月1日に最高裁判所に特大規模のソショウを起す手続きを取った…

保護者《せいとのおや》たちは、私立高校《メートク》に対してあつことてつやを退学《ついほう》させることと高校側《ガッコーがわ》の幹部全員に合計1京円《けいえん》の損害賠償を支払うことと私立高校《メートク》の理事長夫婦に強制辞任を求める…をテイソした。

裁判は、7月2日から予定通りに行われることが決まった。

裁判が終わる時期は、未定である。

また、西路見夫婦《さいろみふうふ》も保護者《せいとのおやたち》によって最高裁判所へ訴えられたのでひどくコンワクしていた。

話は変わって…

かおるは、西路見夫婦《さいろみふうふ》にあつことてつやの今の状況を泣きながら説明した。

かおるの話をひと通り聞いた西路見《さいろみ》は、困った声でかおるに言うた。

「お話はよく分かりました…それで、あつこさんとてつやさんは今後どうなされるおつもりでしょうか?」

かおるは、泣きながら西路見《さいろみ》に言うた。

「主人は…あつことてつやが高校《ガッコー》にいかなくなったので…もうあきらめたと言うて…授業料支払いの専用の口座を解約した…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…あつことてつやの将来必要な費用が貯蓄されている口座も…なくなった…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…うちもいかんところがあるのです…健ちゃんの結婚準備に夢中になっていたから…あつことてつやから…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…うちのことがキライだと言われた〜ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…うち…もうあきらめます…あつことてつやの人生を…うちがパーにしたから…あつことてつやにきらわれた…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…」

困ったなぁ…

どうすればいいのか…

西路見《さいろみ》は、過度にやさしい声でかおるに言うた。

「お話はよく分かりましたが、わたくしどもの意見は、あつこさんとてつやさんに高校《ガッコー》にもう一度行ってほしいのです。」
「そうは言うけど…無理です。」
「将来のために取っていた貯蓄はまた作り直せばいいですよ…高校《ガッコー》に行ってる間は高校《ガッコー》で楽しい時間を過ごせばいいですよ…将来のことは短大《メータン》を卒業したあとにゆっくりと考えればいいですよ。」
「短大《メータン》を卒業したあとにゆっくりと考えるなんて…ご主人さま、うちらは高齢であとがないのですよ!!」

かおるは、やっきになって『残された時間はない!!』と西路見《さいろみ》に言うた。

西路見夫人《おくさま》は、かおるに対して過度にやさしい声で言うた。

「おかあさま、おちついて…」
「おちついてられないわよ!!」
「おかあさまのあせるお気持ちはよく分かりますけど、あつこさんとてつやさんはまだ未熟だから社会のことがよく分からないのよ…未熟な状態で社会へ出たら大失敗するかもしれないのよ。」
「だからどうしたいのですか!?」
「だから私立高校《メートク》に行くのよ…」
「それは無理です!!」
「(困った声で)それじゃあどうしたいのよ…高校中退の状態で社会に出たら、あつこさんとてつやさんが不利になるのよ…それでもいいの?」

西路見夫人《おくさま》の言葉を聞いた西路見《ごしゅじん》は、過度にやさしい声でかおるに言うた。

「私たち夫婦も一緒に呼び出しに行きますよ…おかあさまがうまく伝えることができないのであれば、私たち夫婦がかおるさんに代わって説明しますよ。」

西路見夫人《おくさま》は、過度にやさしい声でかおるに言うた。

「大丈夫よ…わたしたちがついてるから…おかあさまは心配しなくてもいいのよ…」

西路見夫婦《ごふうふ》からやさしくされたかおるは、力ない声で『お願いします…』と言うた。

時は午後2時頃であった。

またところ変わって、北日吉町にある私立高校《メートク》の本校にて…

本校の会議室に、かおると西路見夫婦《さいろみふうふ》と高校関係者《かんけいしゃ》20人と理事長夫婦がいた。

会議室では、査問委員会がひらかれていた。

委員は、かおるからあつことてつやの今の状態を聞いた上で今後の処遇を決める方針である。

西路見《さいろみ》は、委員たちにかおるはものが言えないので代弁《だいべん》することを伝えたあと、あつことてつやの今の状態を伝えた。

ひと通り話し終えた西路見《さいろみ》は、委員たちにあつことてつやを私立高校《メートク》に籍《せき》を残してほしいと伝えた。

「わたくしども夫婦は、あつこさんとてつやさんに(全日制の)高校に行ってほしいのです…わたくしども夫婦は…あつこさんとてつやさんが制服を着て、希望に満ちあふれた表情で高校に通っている姿が見たいのです…朝の通学路で、制服を着た子たちが…『あつこちゃんおはよう』…『てつやくんおはよう』…とやさしく声をかけてくれる…あつこさんとてつやさんが高校《ガッコー》でお友だちと楽しい時間を過ごしている姿が見たい…修学旅行…合宿訓練でみんなと一緒にハンゴウスイハン、地引き網…体育祭…文化祭…楽しい時間を過ごせる場所は高校《ガッコー》しかないのですよ!!…分かりますよね!!聞いてますか!?」

委員のひとりがめんどくさい声で『聞いてるよ…』と言うたあと、西路見《さいろみ》に対して『早く終われ!!』とあつかましく言うた。

西路見《さいろみ》は、なおも委員たちに対して力説《せっとく》をつづけた。

「まだ終わりではありません!!高校側《ガッコーがわ》はどう思っているか分かりませんが、わたくしどもはあつこさんとてつやさんの籍《せき》をここに残してほしいと訴えているのです!!」

西路見夫人《おくさま》は、悲痛な声で委員たちに訴えた。

「高校中退の学歴で社会に出たらあつこさんとてつやさんが不利になります!!…就職はもちろんのこと、資格取得試験が制限される分がある…結婚…結婚も大きく不利になるのです!!…不利になったら困るので、あつこさんとてつやさんをもう一度ここで受け入れてください!!」

西路見夫人《おくさま》の言葉を聞いたクソナマイキなジジイの委員たちが口々に言うた。

「そうは言うけど、うちとしては困るのだよ!!」
「高校に行きたいのであれば、定時通信制《テーツーセー》に転向《かえる》ことはできるのだよ。」
「男子の自衛隊入隊資格が32歳までに延長されたことを知らないのかなァ〜自衛隊の中にも通信制高校があるのだよ。」
「お金が貯まる、通信制高校に通える、仕事に必要な資格が取れる…除隊後のことはゼーンブ自衛隊がしてくださるのだよ。」

委員たちがクドクドクドクドクドクドクドクドと言いまくっていたのを聞いた西路見《さいろみ》は、ものすごく怒った声で『むしがよすぎる!!』と言うたあと、委員たちをボロクソにヒナンした。

その後、委員たちにこう言うた。

「あんたらの言うことはむしがよすぎる…あんたらの言うことは大ウソだ…高校と言うたら全日制に限る!!…働きながら学ぶと言う意味が分からない…全日制高校が高校の本来の姿だと言うのが分からないのか!!…あつこさんとてつやさんをここに通わせろ!!…あつこさんとてつやさんにもう一度チャンスを与えろ!!…与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ与えろ…与えろといよんのが聞こえないのかクソバカ野郎!!…以上です…」

このあと、委員長を務める白髪のじいさんがかおるに言うた。

「おかあさま、言いたいことはございますか?」

かおるは『ございません。』と答えた。

これで、査問委員会は終了した。

あつことてつやの処遇については『そのうちに伝える』と言うことであった。

処遇が決まったら伝えると言うのはタテマエで、高校側《ガッコーがわ》のホンネはあつことてつやを私立高校《メートク》に籍《せき》を残すことはできないから退学《ついほう》するしかない…と言うことである。

しかし、かおると西路見夫婦《さいろみふうふ》は高校側《ガッコーがわ》があつことてつやにチャンスを与えてくださったと受け止めて大喜びしていた。

そうした思い込みが原因で、かおると西路見夫婦《ふうふ》はこのあと手痛いしっぺ返しを喰らうのであった。

時は、夜7時過ぎであった。

またところ変わって、宮下町《みやしたちょう》の豪邸《いえ》の大広間の食卓にて…

食卓には、かおると健一郎と西路見夫婦《さいろみ》夫婦がいた。

テーブルの上には、はま寿司(回転寿司屋)で購入したにぎり寿司のパーティセットが並んでいた。

志桜里《しおり》は、ダイニングキッチンで洗い物をしていた。

かおるは、過度にやさしい声で健一郎に言うた。

「健ちゃん、ごはん食べようか。」

健一郎は、ものすごくつらい表情で言うた。

「あの〜…ぼく…家で食べます…」

西路見夫人《おくさま》は、ものすごく困った声で健一郎に言うた。

「えっ?どうして?」
「だから、おかーさんが家で晩ごはんを作って待っているのですよ。」

困ったわね…

かおるは、ものすごく困った表情でつぶやいた。

そんな時であった。

(ジリリリリリリリリリリリン!!ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリン!!)

大広間に置かれているダイヤル式の黒電話のベルが鳴り響いた。

かおるは、過度にやさしい声で健一郎に言うた。

「健ちゃんのおかーさんから電話がかかってきたわよ…」
「えっ?」
「大丈夫よ…ちょっと待っててね。」

かおるは、受話器を手にしたあとお話をした。

「はい…宮下町《みやしたちょう》の神谷《こうのたに》でございます…あっ、波佐見《はさみ》の奥さまでございますね。」

電話は、おとなりの家の奥さまからであった。

おとなりの家の奥さまは、西路見夫人《おくさま》に電話を代わってくださいと言うた。

かおるは、やる気のない声で言うた。

「波佐見《はさみ》の奥さま…どちらからお電話をかけているのですか?」

受話器のスピーカーから、通りに流れているわけのわからないアーティストの歌と客引きのニイチャンの声が聞こえた。

波佐見《はさみ》の奥さまは、どこから電話をかけているのか…

かおるは、ひどく不安な表情でつぶやいた。

ところ変わって、共栄町のナイトクラブが立ち並んでいる通りにて…

おとなりの家の奥さまは、その付近にあるたばこ屋にいた。

おとなりの家の奥さまは、たばこ屋のカウンターに置かれている赤色の10円電話から電話をかけていた。

電話の横には、10円玉が大量に積まれていた。

おとなりの家の奥さまは、ものすごく変な声で受話器ごしにいるかおるに言うた。

「もしもし…西路見《さいろみ》の家の奥さまが電話に出れんとはどう言うことよ!?…電話に出れんと言うて逃げ回っていたら恐ろしい目に遭うわよ!!」

おとなりの家の奥さまは、10円玉を投入口に入れながら変な声で受話器ごしにいるかおるに言うた。

「ちょいとおくさま…おくさまに聞くけど…雑賀《さいか》の家の奥さまからなんか聞いてなかった?」

かおるは、受話器ごしにいるおとなりの家の奥さまにこう言うた。

「ああ、健ちゃんのおかあさまは…ああ、急患が入ったから一晩帰れませんっていよったけど…」

おとなりの家の奥さまは、受話器ごしにいるかおるに変な声で言うた。

「急患が入ったから帰れなくなったァ〜…県病院に電話して聞いたけど、そのような事象は発生していませんといよったよ…」

おとなりの家の奥さまは、スマホを使って隠し撮りをした。

(カシャ、カシャ、カシャ、カシャ…)

スマホで隠し撮りをした奥さまは、グーグルフォトのアプリをひらいたあと先ほど撮影した写真を見ながらかおるに言うた。

「おくさま…さっきね、雑賀《さいか》のおくさまが若いホストふたりと腕を組んで歩きながらイチャイチャしよったよ…その様子を(スマホのカメラで)隠し撮りしたわよ。」

それを聞いたかおるは、顔が真っ青になった。

「波佐見《はさみ》のおくさま!!なんでひどいことをしたのですか!?隠し撮りをするなんてひきょうよ!!」

おとなりの家の奥さまは、ものすごくナマイキな声でかおるに言うた。

「ひきょうは西路見《さいろみ》の家の方よ!!急患で帰れなくなったと子どもにウソついて、若いホストとフリンしていた…それこそひきょうよ!!…そんないやたい(きたない)女をヨウゴしよる西路見《さいろみ》の家はもっとひきょうよ!!他にも、雑賀《さいか》の奥さまは外によぉけ男がいると聞いたわよ!!島内の奥さまから聞いた話だけど、数日前に衣干のヤマダ電機の近くにあるラブボに、雑賀《さいか》の奥さまとチャラいカッコウの男が運転する車に乗っていたところをダンナが目撃したって…」

(チャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリン…)

おとなりの家の奥さまは、投入口に追加の10円玉を入れながらかおるに言うた。

「あとね、遠方の方でも雑賀《さいか》の奥さまが違う男といやたいことをしよる場面がちょくちょく目撃されているのよ…あれ数日前だったと思うけど、たしか、川之江のDCM(ホームセンター)の駐車場だったと思うけど…マゼンタの(マツダ)デミオに雑賀《さいか》の奥さまと22くらいの若い男が乗っていた状態で停まっていたのよ…その車中で、雑賀《さいか》の奥さまが男にまたがった状態でものすごく大きな声をあげていたわよ…ほんとうの話だから言うたのよ…雑賀《さいか》の奥さまがハートマーケット(テレクラ)を使って男を逆ナンして…男をつまみ食いしていたことが分かったのよ…それ聞いてどう思うかしら…お子さまが聞いたらなんて言うのか…考えたことあるかしら!!」

かおるは、悲痛な声で『やめてください!!』と言うたあとおとなりの家の奥さまに言うた。

「奥さま!!健ちゃんは5月にお見合いをしてお嫁さんをもらうことが決まったばかりなのよ!!これから幸せになろうとしているのよ!!」

奥さまは、受話器ごしにいるかおるにものすごくナマイキな声で言うた。

「フン、なにが『健ちゃんは幸せになろうとしているのよ…』かしら…奥さま、一度ご自分の顔を鏡に写してじっくりと見たらどうかしら〜…あんたもいかんところがあることに気がついてよね…自分のお子さまよりも雑賀《さいか》の家の子息《バカセガレ》の心配をしよることが原因で、親子の関係が気まずくなっていることがまだ分からないの?…あんたは雑賀《さいか》の家とどんな関係があるのよ…西路見《さいろみ》の家とどんな関係があるのよ…自分のお子さまたちが高校《ガッコー》から退学《ついほう》される危機におちいった原因を作っておいてなんなのよ!!…あんたが西路見《さいろみ》の家を利用するだけ利用していたことが原因で家庭がおかしくなったのよ!!…自分のお子さまが未熟な状態を作った原因はあんたにあるのよ!!…なによ!!あんたらはうちにイチャモンつける気!?…雑賀《さいか》の家の子息《バカセガレ》のお嫁さんになる女性《ひと》は(JA)おちいまで一番の美人と言うたわね…そう…梶谷《かじたに》の一人娘《むすめさん》だったかしら…あのね…ちょいと小耳にはさんだ話だけど…」

おとなりの家の奥さまは、スマホの画面を見ながらかおるに言うた。

「梶谷《かじたに》の一人娘《むすめさん》の全裸《ヌードしゃしん》がインターネットにケイサイされていたわよ…写真は自撮りで撮影されたものよ…ちょいと聞いた話だけど…梶谷《かじたに》の一人娘《むすめさん》は自撮りで撮影した写真をボーイフレンドに送っていたみたいよ…梶谷《かじたに》の一人娘《むすめさん》は、危機感が全くないのよ…危機感が全くないからことの次第が分からないのよ!!そんないやたい女と健一郎《バカセガレ》が結婚したら非常に危ないわよ!!それでもあんたは健一郎《バカセガレ》に幸せになってほしいと言うの!?…よその家の子息《バカセガレ》にばかりえこひいきした結果、あんたは痛い目に遭ったのよ…フン、いいきみだわ…」

(チャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリン…)

おとなりの家の奥さまは、投入口に追加の10円玉を入れながらかおるに言うた。

「それともう一つ話があるわよ…週刊実話(週刊誌)の最新号だったかしら…そこにとんでもない記事が書かれてあったわよ…そうよ…ヤクザに関連する記事よ…たしか…ヤクザの組長の横にほほえみを浮かべている男性が一緒にいたわよ…顔は…雑賀《さいか》のご主人だったかしら…ウソじゃないわよ…本当だから言うたのよ…雑賀《さいか》のご主人は、愛媛県警《けんけい》の警察官なのに反社会的勢力の人間と交友関係があったことが週刊誌で報じられたのよ!!…他の週刊誌にも写真が載っていたわよ…『実話』だけじゃなく、『大衆』も『アサヒ芸能』も『フライデー』にも載ってたわよ…きょう発売された『現代』と『ポスト』には、雑賀《さいか》のご主人とヤクザ関係の人間との交友関係の記事でページが7割使用されたのよ!!あんたが健一郎《バカセガレ》に対して超えこひいきしたから週刊誌にいやたい記事が載ったのよ!!健一郎《バカセガレ》に対して過度に愛情を注ぎまくった末に、あんたは手痛いしっぺ返しを喰らったのよ!!…ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ〜…フンをざまあみろ…」

(ガチャーン!!)

おとなりの家の奥さまは、受話器ごしにいるかおるに対してよりし烈な高飛車嗤《タカビーわら》いを浴びせたあとガチャーンと電話を切った。

おとなりの家の奥さまから高飛車嗤《タカビーわら》いを浴びせられたかおるは、ものすごい血相で怒り狂った。

八重《やえ》が夫以外の男をつまみ食いしていた…

隆三《りゅうぞう》がヤクザ関係の人間と交友関係があった記事が複数の週刊誌に掲載された…

その上に、菜水《なみ》が自撮り写真をネットでばらまいた…

…がオモテザタになってしまった。

どうしよう…

どうしたらいいの…

どうやって健ちゃんを守ればいいのか…

どうしたらいいの…

過度に健一郎を甘やかしたかおるは、手痛いしっぺ返しを受けた…

同時にトメと昭久《あきひさ》とあつことてつやの関係がさらに悪化した…

これにより、健一郎と菜水《なみ》は結婚ができなくなるおそれが生じた。

西路見夫婦《さいろみふうふ》と榎戸夫人《きょうじゅふうふ》は、より苦しい立場に置かれた。

本当の悲劇は、ここより始まる。

【つづく】
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