【辛口ホームドラマ】チャーミー(平成30年台風24号災害)

【大雨特別警報発令24時間前】

7月4日頃、気象庁が緊急の記者会見をひらいた。

記者会見の席で、防災担当の白髪でめがねの男性が『これは異常事態です…』と記者たちに伝えた。

…と言うことは、大規模な豪雨災害が発生するリスクが非常に高くなったと言うことである。

1年前(2017年)の7月6日に福岡県筑後地方と大分県西部を襲った平成の九州北部豪雨災害から1年になる…

その時にまた悪夢が襲いかかる…

なんで…

どうして…

どうすればいいのだ…

どこへ避難すればいいのだ…

市役所はこんな非常時になにをしているのだ…

市民たちの不安が、さらに拡大したようだ。

(ドザー!!ドザー!!ドザー!!ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!ドザー!!ドザー!!ドザー!!)

話は、その翌日(7月5日)のことであった。

この日の予報は雨朝晩曇りであったが、夕方頃に雷を伴った非常に激しい雨が降り出した。

ところ変わって、北日吉町のセブンイレブンの敷地内にあるコインランドリーにて…

志桜里《しおり》は、豪邸《いえ》の庭に干していた洗濯物を取り込んだあとここへ持って来た。

洗濯物はグチョグチョに濡れていたのでもう一度洗濯し直すことにした。

志桜里《しおり》は、ドラム式洗濯乾燥機の中にグチョグチョに濡れた洗濯物を入れたあと100円玉3枚を投入口に入れた。

店内にあるユーセンのスピーカーからFMラヂオバリバリが流れていた。

ラジオは、通常の放送を取りやめて緊急放送を伝えていた。

ここ数日の間、大気の状態がより不安定になっていた。

この日も、愛媛県に記録的短時間大雨情報や竜巻注意情報がヒンパンに伝えられた。

夕方4時半頃であった。

この時、雨はいったん小康状態になった。

志桜里《しおり》は、ドラム式の洗濯乾燥機の中から洗濯物を取り出したあとエコバッグの中に入れた。

その後、大急ぎで豪邸《いえ》に帰宅した。

時は、夜8時半過ぎであった。

ところ変わって、宮下町《みやしたちょう》の豪邸《いえ》の大広間にて…

大広間には、かおるがいた。

かおるは、電話の応対をしていた。

トメは、自分の部屋でテレビを見ていた。

昭久《あきひさ》は、体調が悪いので早寝していた。

志桜里《しおり》は、コインランドリーで洗濯し直した洗濯物にアイロンがけをしていた。

電話の応対をしているかおるは、ものすごくつらい声で話していた。

「もしもし…かおるですが…」

電話は、西路見夫人《さいろみのおくさま》からであった。

かおるは、ものすごくつらい声で言うた。

「健ちゃん…健ちゃんがどうかしたの?…健ちゃんが自衛隊から脱走した!?…もしもし、健ちゃんが自衛隊から脱走したのは何時頃《いつごろ》なの…今朝早く…ランニング中に行方不明になったのね…健ちゃんはこちらには来てないわよ…うん…それじゃあ、健ちゃんがうちに来たら連絡するように伝えておくわ…うち、ちょっと思ったけど…健ちゃんはよそで暮らすことは無理だったと思ったの…でも、そのようにしたうちに全部非があるのよ…ご両親が共稼ぎで家を空けている時間が多かった…軽い気持ちで健ちゃんの世話を引き受けたことがいかんかったのよ…健ちゃんがここへ来たら、西路見《さいろみ》の家と榎戸先生の家に電話するように伝えておくわ…健ちゃんが脱走した事件については、うちの知人の弁護士さんを立ててジダンコウショウするから…うん…うん…」

(カチャッ…)

かおるは、ゆっくりと受話器を置いたあと大きくため息をついた。

(ウーウーウーウーウーウーウーウーウーウー…カンカンカンカンカン…)

この時、巡回中の中央消防署の救助工作車がサイレンと鐘を鳴らしながら豪邸《いえ》の前を通過した。

この時、宮下町《みやしたちょう》の山沿いの地区に避難指示が発令されていた。

豪邸《いえ》がある地区は高齢者等避難開始が発令されていたが、避難せずにそのまま家にいた。

夜9時を過ぎた頃に、雨は再び小康状態になった。

しかし、災害が切迫している状況にかわりはなかった。

そして、7月6日…

(ザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザー…ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…ザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザー…)

大気がより不安定な状態が数日に渡って続いた。

昼過ぎあたりからであったが、雨の降り方がよりケンチョになった。

午後2時過ぎた頃、今治市内で住宅が浸水した被害が2件出たと言う情報が出た。

たいへんだ…

もう危なくなったかもしれない…

同じ頃、気象庁が再び緊急の記者会見をひらいた。

この時、防災担当の白髪でめがねの男性が夕方5時以降に大雨特別警報を発令する可能性があるとゲンキュウした。

大雨特別警報は、府県ごとではなく地方単位で発令すると発表された…

発令の対象地域は、西日本から東海にかけての広範囲…である。

…と言うことは、四国地方に大雨特別警報が発令されるかもしれない…

たいへんだ…

一刻も早く避難しないと…

手遅れになってしまう…

市民たちがパニックを起こしたようだ…

その頃であった。

志桜里《しおり》は、イオンモール今治新都市の中にあるイオンスタイルにいた。

不測の事態に備えて、緊急物資等を購入した。

夕方5時以降に大雨特別警報が発令されるかもしれない…

住んでいる地区が浸水する恐れがあるかもしれない…

土砂崩れなどで家がぺちゃんこになるかもしれない…

この時、志桜里《しおり》だけではなくここに買い出しに来ていた人たちの間で大パニックが発生した。

午後4時頃であった。

志桜里《しおり》は、大量の緊急物資等を持ってタクシーに乗り込んだ。

この時、ラジオのニュースで四国地方のJR全線が運休になったと言う情報が伝えられた。

大雨特別警報が発令される時が迫ってきた…

もう危ないかもしれない…

(ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!ドスーン!!ドザーーーーーーーー!!ドザーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!)

タクシーがしまなみ海道の今治インター付近の交差点に着いた時であった。

よりし烈な雷鳴が轟いたあと、1時間に80ミリに相当する猛烈な雨が降り出した。

それから2分後に、信号が青に変わった。

志桜里《しおり》が乗っているタクシーは、市内方面に向けて走行した。

その途中で、志桜里《しおり》はもっともおそろしい光景を目の当たりにした。

この時、浅川と浅川の支流《わき》にあたる日吉川がタプタプになっていた。

合流点にかかる海池橋(新しい旧道の部分にある橋)の向かい側(阿方《あがた》・延喜《えんぎ》へ向かう方)の道路に川の水があふれていた。

その様子を見た志桜里《しおり》の気持ちがものすごく不安定になった。

川の水は、馬越二番耕地《うまごえにばんこうち》へ向かっていた…

どうしよう…

もしかしたら…

豪邸《いえ》がある地区も危ないかもしれない…

夕方4時20分頃であった。

タクシーが宮下町《みやしたちょう》の豪邸《いえ》に到着した。

この時、北高の東側にある側溝《ドブ》の水が道路にあふれ出す一歩手前におちいった。

豪邸《いえ》は、側溝《ドブ》から300メートル離れたところにあるが、危険が差し迫っていることにかわりはなかった。

志桜里《しおり》は、タクシーから降りたあと後ろのトランクに積んでいた大量の緊急物資等を取り出した。

「すみません…お願いします。」

運転手さんは、志桜里《しおり》と一緒に大量の緊急物資等をおろす手伝いをした。

ところ変わって、豪邸《いえ》の大広間にて…

大広間には、トメとかおるがいた。

昭久《あきひさ》は、この時家にいなかった。

時計のはりは、夕方4時55分を差していた。

家の大広間のテレビの画面にNHK総合テレビが映っていた。

この時間は、『ニュースシブ5時』が放送されていたが特別警報級の大雨が降る恐れが出たので緊急モードになっていた。

その中で、志桜里《しおり》が帰宅した。

「ただいま帰りました!!」
「志桜里《しおり》さん、おかえりなさい…」

(ピンポンパンポーン…)

夕方5時を過ぎた頃であった。

今治市の防災行政無線のスピーカーからチャイムが鳴ったあと緊急放送が聞こえた。

それによると、今治市の山沿いの地区に避難指示が発令されたと伝えられた。

豪邸《いえ》がある場所は、山(姫坂神社の付近)から離れていたが、300メートル先にある側溝《ドブ》がいつあふれ出すかわからない…

(ピンポンパンポーン…)

緊急放送の終わりを告げるチャイムが鳴ってから30秒後であった。

(ブーーーーーーーーーーッ!!ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!…)

この時、より強烈なブザー音が今治市内一帯に響き渡った。

夕方5時20分頃であった。

九州北部に大雨特別警報が発令された!!

たいへんだ…

大雨特別警報が発令された…

どうしよう…

次は、四国地方にも発令されるかもしれない…

この時、市民の気持ちはより強い不安にさいなまされた。

夕方6時20分頃であった。

ところ変わって、共栄町のナイトクラブが立ち並んでいる一方通行路にて…

(ウーウーウーウーウーウーウーウーウーウー…カンカンカンカンカンカンカンカン…)

中央消防署の救助工作車がけたたましいサイレンと鐘を鳴らしながらパトロールをしていた。

この時、黒のキャデラックが道の真ん中をふさいでいた。

消防車のスピーカーから『車を動かしてください!!』と叫んでいた。

この時、車の持ち主のヤクザの男たち数人がやって来た。

ヤクザの男たちが『なんじゃあオドレ!!』と凄んでいった。

その時であった。

(ズドーン!!ガシャーン!!)

ヤクザの男たちが所有しているキャデラックに銃弾が撃ち込まれた。

銃弾は、フロントガラスにあたった。

銃を発砲したのは、健一郎だった。

健一郎は、自衛隊から脱走した時に銃を持って逃走した。

「オドレクソバカチンピラ!!」
「なんやオドレやるんか!!」
「死ねやクソバカオヤジ!!」

(ズドーン!!ズドーン!!ズドーン!!)

健一郎は、ヤクザの男たちと一緒にいた隆三《りゅうぞう》を撃ち殺した。

その後、健一郎は足早に逃げ出した。

「雑賀《おやっさーん》!!」
「またんかいコラ!!」

(ズドーン!!ズドーン!!)

健一郎を追いかけていたヤクザの男ひとりが撃たれた。

(ドザーーーーーーーーーーーーーーーーー!!)

雨がさらに強さを増した。

健一郎に撃たれたヤクザの男がスマホを使って電話をかけた。

「アニキ…雑賀《おやっさん》が殺された…」
「なんや!!雑賀《おやっさん》が殺された!?」
「雑賀《おやっさん》の伜《クソガキ》が拳銃《チャカ》で撃った…かた…(ガク)…」

撃たれたヤクザの男が死亡した。

スマホのスピーカーから、アニキの叫び声が聞こえていた。

叫び声は、し烈な雨によってかき消された。
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