1monthCinderella〜契約彼氏は魔法使い〜
竜基side



言霊という魔法で亜由美が自分に自信を持つようになると、どんどん輝きを増してきた。
アンソルスレールの要注意常連客の一人で、俺セレブ感を撒き散らして女性を誘う男が亜由美に接触をしてきた。
俺セレブ男も客ではあるから、女性側が拒否反応を示している様ならさりげなく仲裁に入るようにスタッフにも通達していた。
その男がよりにもよって亜由美をターゲットにするとは、しかも断られると大人気ない言葉を投げかけている。
やや圧強めに俺セレブ男を退場させたが、こういう場面に免疫のない亜由美が精神的な負担がかかったようで、家に着くなり崩れ落ちてしまった。

抱きしめると落ち着いたのか、スルリと俺の元から離れてバスルームに向かった。
パピーかと思えばキティになる。
案外、小悪魔になるかもしれないな。

そんなことを考えているとおふくろからの着信にため息がでる。

「俺は会うつもりは無いから」

先に釘を刺す。

『何よ、まずは元気?とかでしょ』

「元気なことは分かりきってるんだ、どうせ例の見合いの話だろ」

『だって、頼まれちゃったから。会うだけでいいから』

「おふくろと親父って恋愛結婚だろ?付き合ってる時に親父が見合いとかしたらどう思うんだよ。それに、こっちにその気が全く無いのに下手に会って向こうがその気になったら失礼だろ」

『それを言われちゃうとね、確かに嫌だわ』

「そのお見合いはそっちできちんと断って」

『確かにそうよね、向こうは初めから竜基が良いっていってる訳だし』

「俺には一緒に暮らしている恋人がいるんだ」

『え!一緒に住んでいたの、それを早く言いなさいよ。会えるのが楽しみになってきたわ』

放っておくとまだまだ話をつづけそうだから「切るからな」と言ってから通話を切った。

思いっきりため息をついて時間を見ると亜由美がバスルームへ行ってから時間が経っている。
寝落ちしているかもしれないと思い、バスルームに行ったがそこにはいなかった、それで今度はベッドルーム行きベッドに横になっている亜由美を見ると明らかな狸寝入りだ。

こういう行動一つ一つが俺の理性を突いてくる。

耳元で声をかけるとさらに可愛い反応が返ってきて計算なのかと思うほど忍耐力を削ってくるが、計算じゃないからこそタチが悪い。

そんな悪い子にはレッスンという名の意地悪をしようとキスをしたが、その反応も可愛すぎてつい本気モードを出してしまった。

俺の方こそタチの悪い大人かもしれない。







海外の取引先とのリモート会談の為に帰宅が日を跨いだ。
今迄はいつもの事だったが、亜由美の寝顔を見ていると少し寂しい感情がうまれ、朝食をつくっている姿が可愛くてついキスをしてしまった。
しかも、これからはおはようのキスをしようとか恥ずかしい事を言ってしまったのに、「はい。お願いします」とか可愛すぎて悶えそうだ。

ご褒美がデートとか柄にも無い事を言ってしまったが可愛い小悪魔が顔を真っ赤に染めていたのでよしとしよう。


寄木細工を見たかったからデートも兼ねて亜由美を誘ったら終始隣で楽しそうにしている姿を見ていると新しい店のアイデアがどんどん湧いてくる。
楽しかった一日の締めくくりに購入した寄木細工のぐい呑みでせっかくだから大吟醸箱根街道を板わさをつまみに二人で楽しむ。

江戸切子の工房へ誘ったらとろける笑顔を向けてくる。
お酒も入ってほんのりと蒸気した表情は俺の理性を刺激し思わず抱きしめるとそのまま口付ける。
顎先から首すじへキスを落としているとスマホのバイブ音が響き出して我に帰った。
危なかった。スマホが鳴らなければ抱いてしまったかもしれない。
気が動転してついバルコニーに出てしまったが画面には石丸志摩の名前が表示されていた。















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