Cherry Blossoms〜白銀の女神〜

手術が無事に終わったことで、この場の空気は温かいものに変わっていた。だが、桜士の手をヨハンが痛いほど強く掴む。

「おい」

「何ですか？」

桜士をヨハンは鋭い目で睨み付ける。桜士は恐怖を感じてはいなかったものの、強張った表情は作っておいた。ヨハンの口が動く。

「一花の血液型のこと、誰にも言うなよ？RH nullは貴重な血液だから、裏社会で血液ビジネスをやってる奴らからしたら一花はダイヤモンドや金塊と同じ価値なんだ。……わかってるよな？」

桜士は掴まれている手を振り解き、「言いませんよ、誓います」と答える。一花が狙われるリスクがあるようなことは何があっても桜士はしない。一花に特別な想いを寄せているからだ。

「ヨハン、そこまで睨むなよ。本田先生はそんな人間じゃないだろ」

オリバーに言われ、ヨハンは渋々と言った表情で桜士から離れる。そんな中、リティクが言った。

「何はともあれ、うまくいってよかった……。手術ももちろんだけど、大きいのはあの絵だな」