Restart~あなたが好きだから~
「うわぁ、綺麗・・・。」


「理子さん、素敵すぎる・・・。」


(ホントに綺麗・・・。)


同じテーブルの同僚から上がる、感に堪えないような声に七瀬は頷く。その視線の先には、純白のウェディングドレスに身を包み、新郎と腕を組み、艶然と微笑みながら、ゆっくりと歩を進める理子の姿があった。


7月半ばの3連休初日。梅雨も明け、夏本番の到来を告げる陽が燦々と降り注ぐ佳き日。澤崎貴大と城之内理子の結婚披露宴は、厳かに、華やかに挙行されていた。


高砂席に立った新郎新婦が、参列者に一礼して席に着くと、司会者が宴の開会を宣する。そしてその後、新郎新婦の紹介に立ったのは、立会人代表である氷室圭吾だった。


「私にとって、新郎の澤崎は、大学時代に一緒にIT研究会というサークルを立ち上げて以来の友人であり、また現在は弊社の人事部次長として、専務である私を支えてくれている信頼出来る部下です。そして新婦の理子さんは、つい先日まで秘書として、私に誠実に仕えて下さいました。そんな2人の大切な人生の門出に際し、立会人代表を務められることは、大変な名誉であり、また喜びであります。」


氷室は顔を紅潮させながら、こう述べた。続いて、主賓として挨拶に立ったのが、彼の父親である氷室圭介プライムシステムズ社長。氷室社長は挨拶、祝辞の後、そのまま乾杯の音頭も取った。


そして披露宴メインイベントの1つであるウェディングケ-キ入刀を経て、歓談、お食事タイムに入ると


「でもさ、立会人代表がまもなく副社長になるジュニア専務。主賓と乾杯が社長、ウチのトップツ-が揃い踏みだもんね。」


「理子さんがおふたりの秘書を務めてたってこともあるけど、澤崎さんがいかに会社から重んじられてるかが、改めて分かるよね。」


「あの齢で人事部次長はやっぱり異例だし、ジュニアの側近として、将来の取締役のイスは約束されてるようなものじゃない。」


「あ~ぁ、理子が羨ましい。」


秘書席はたちまち姦しいことになる。


(そっか、専務が社長になれば、当然澤崎さんは取締役か・・・。)


自らも氷室から将来の取締役手形を落とされている七瀬が、そんなことを考えていると


「それにしてもさ。ここでこんなこと言っちゃまずいのかもしれないけど、理子さんは絶対専務とくっつくと思いましたよね。」


ひとりがやや声を潜めて言う。
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