Restart~あなたが好きだから~
ようやく唇が離れた。だが、身体は依然として閉じ込められたまま。


「なんで・・・。」


こんなことをするの?・・・七瀬は抗議の思いを込めた視線で、氷室を見上げる。


「ずっと探していたんだ。」


「えっ?」


「俺のバディたりえる、パートナ-にしたい女を。」


七瀬の視線を受け止め、氷室もそう言って、真っすぐに彼女を見る。


「城之内理子は、俺にはバディとしては不足だったし、理子の方には俺のパートナ-になる気がなかった。どこぞの御令嬢との縁談もなかったわけじゃないが、そんな女は所詮、実家の威光を背にして輝いて見えるだけだ。バディになんかになれるはずはない。俺の理想は高すぎるのかもしれない、そんな思いが俺の中で高まり始めた時、やっと見つけ出したのが藤堂七瀬、お前だった。」


「氷室、さん・・・。」


「正直に言おう、俺は営業会議で初めてお前を見た時から、目を付けていた。まず容姿も顔も、どストライクだったからな。そして営業マンとしても、あっという間に頭角を現して、すぐに主任になった。能力も申し分ない。あとはお前を俺のもとに呼び寄せるタイミングだけだった。幸い、お前は恋愛に興味がないと公言していたから、他の男にさらわれる心配がない。過去になにかトラウマになるようなことがあったのかもしれないから、俺の側に呼び寄せてから、じっくり時間を掛けて落とすつもりだった。それが・・・。」


ここで言葉を切った氷室は、ようやく七瀬の身体を離した。でも彼女の両肩にガッシリとつかんで、相変わらずじっと視線を向けたまま


「昨日、一緒にいた幼なじみに向けるお前の視線は、明らかに恋愛感情を帯びたそれだった。」


「・・・。」


「否定しないんだな。それがさっきの俺の問いに対するお前の答えと言うことだ。」


「はい。」


とうとう七瀬はそう返事をした。そして、氷室の手を振りほどくと


「私は彼が幼い頃から好きでした。でも彼は私のそんな気持ちに気付かず、私も彼に想いを打ち明けられないでいるうちに、彼には素敵な恋人が現れて・・・もう彼の横に私の居場所なんてどこにもなくなってしまった。だからそんな彼を諦める為に、私は恋愛そのものに背を向けたんです!」


そう言って、氷室に毅然とした視線を向けた。
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