Restart~あなたが好きだから~
「デートしてるんだよね?」


「うん・・・。」


「でも、付き合ってないんだ?」


「・・・。」


「自分で気が付いてるかわからないけど、さっき私からお姉ちゃんたちを迎えに行かないって聞いた時、七瀬、一瞬だけど表情が曇ったよ。」


「えっ?」


「氷室さんがお姉ちゃんと2人きりになることに、モヤついたからだよね?」


「・・・。」


図星だった。七瀬が何も言わない、いや言えないでいると、次の瞬間、奈穂のスマホが鳴った。


「ちょっと待って、お姉ちゃんからだ。」


ディスプレイを確認した奈穂は、七瀬にそう言うと電話に出た。


「はい、お疲れ様です。はい・・・えっ、ホント?良かったね。」


明るい声を出した奈穂が、七瀬に向かって、笑顔で右手親指を立てて見せる。その意味を理解した七瀬も


(良かった・・・。)


ホッとしたように笑顔で頷く。


「うん、それで・・・えっ、そうなの・・・。」


その後も通話を続けていた奈穂の表情が一転曇る。


「わかった、じゃ。」


そう言って、電話を切った奈穂に


「どうしたの?何かあった?」


心配そうに七瀬が尋ねる。


「氷室さん、話が終わるとサッサと帰っちゃったんだって。だから迎えに来て欲しいって。」


「えっ?」


「お姉ちゃん、ミーティングのあと、氷室さんと2人で話が出来るかもって楽しみにしてたのに・・・。」


そう言って、1つため息をついた奈穂は


「駅まで送るよ。」


と言って立ち上がった。


レストランを出て、再び車上の人になったふたりの間に会話はなかった。重苦しい空気が流れる中、駅が近付いて来る。すると


「お姉ちゃんが氷室さんのこと好きなの、気が付いてるよね。」


奈穂が口を開いた。


「うん・・・。」


「大学生の時からずっと、好きなんだよ。」


「・・・。」


「お姉ちゃんは本気だよ。」


「わかってる。」


「それに氷室さんも本気だよ、七瀬のこと。」


「うん、それもわかってる・・・。」


「本当にわかってるの?」


「うん・・・。」


「だったら・・・七瀬って最低だね。」


そう言って、奈穂が冷たい視線でこちらを見る。その視線に七瀬は思わず俯いてしまっていた。
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