成瀬課長はヒミツにしたい
「今日ね、真理子ちゃんの事を見てたら、佳菜の姿と重なっちゃって。だからかな? 乃菜が真理子ちゃんの事、すごく気に入ってるんだよね」

「え……」

「乃菜も、どこかで感じてるのかも知れない。やっぱり、あの年齢じゃ母親が恋しいのは当然だよな。なぁ、柊馬。俺も再婚考えようかなぁ、なんてね」

 明彦はそう言うと、両手をぐっと上げて伸びをしながら、チラッと柊馬の顔を伺う。


 その時、コンコンと扉をノックする音が聞こえ、秘書の男性が顔をのぞかせた。

「社長そろそろ戻りませんと」

 明彦は慌てて腕時計に目をやる。

「うわ。さすがに、もう戻らないと……。柊馬。真理子ちゃんに、今後お詫びに食事に誘うからって伝えといて。じゃあ、あとの事、よろしくね」

 明彦はそう言うと、写真を大事そうに引き出しにしまい、バタバタと部屋を後にした。

「あぁ。わかった……」

 誰もいなくなった部屋で、柊馬の戸惑った声だけが、小さく聞こえていた。
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