成瀬課長はヒミツにしたい
「ただ、個人情報のデータを扱う部署は限られている。さっきの真理子の話だと、ミスであればすぐに判明するだろう。問題は……悪意がある場合だな。かなり大事(おおごと)になる可能性がある。下手したら……」

 成瀬は厳しい声を出すと、明彦の顔をチラッと見る。

「下手したら、俺のクビが飛ぶってことか」

 明彦は笑いながら自分の首を切る真似をした。


「おい! ふざけてる場合じゃないぞ。むしろ、ここにいる全員のクビが飛ぶ。正直、新聞社への書き込みも含めると、単なるミスで起こりうる出来事じゃない」

 柊馬は机を両手でバンっと叩いた。

「悪意あり……か」

 明彦は独り言のようにつぶやく。


「とりあえず今は、真理子がどこまで調べられるかにかかってる」

 しばらくして、柊馬が低い声を出した。

「真理子ちゃんには、負担をかけちゃうな。しばらくは、家政婦業もストップだね」

 明彦は椅子に寄り掛かるように腰かけると、ぼんやりと真理子の方を振り返る。
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