成瀬課長はヒミツにしたい

押し込めた想い

 真理子は画面を見つめながら首を傾げる。

 WEBサーバーの公開フォルダには、怪しい形跡は一切残っていない。

「ただのデマを書き込んだってこと……?」

 真理子が顎に手を当てながら考え込んでいると、隣のミーティングルームから成瀬と社長が姿を現した。

 一瞬、二人の間に流れる空気に違和感を覚え、真理子はその場で立ち上がる。


「真理子ちゃん。どんな様子?」

 社長の声は、特に変わった様子はない。

 真理子は思い過ごしかと思いながら、そのまま小走りで二人に近寄った。


「はい。調べてみたんですが、公開フォルダには怪しい点は見つかりませんでした。今現在、フォルダ内に漏洩して困るようなデータは入っていません」

 真理子の話に、社長は成瀬と目を合わすと、ほっとした様子を見せる。

 その時、扉をノックする音が聞こえ、秘書の男性が顔を覗かせた。
< 175 / 413 >

この作品をシェア

pagetop