成瀬課長はヒミツにしたい
 すると、田中さんと同じくらいの年代の、小柄な白髪の男性が成瀬に会釈をした。

「成瀬さん。わざわざこんな遠くまで。大変だったでしょう?」

 工場長も、やはり人の()さそうな優しい笑みを浮かべている。

「いえ、こちらこそ急にすみません。それで、早速なんですが……」

 成瀬が声をひそめると、工場長は小さくうなずく。

「パソコンですね。こちらです……」

 真理子は成瀬の後に続き、工場の中へと入って行った。


 入り口近くのスペースでは、さっきの田中さんが作業の手を動かしている。

 手に持っているのは、ステッキ型の電飾玩具だ。

 スイッチを押すと、ステッキの先のハート型になった部分が色とりどりに光り出す。

 田中さんは一点一点手作業で、ライトの点灯の最終確認をしているようだった。


「わぁ。いっぱいある」

 真理子は思わず、心が躍るような気分になり、つい声を上げる。
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