成瀬課長はヒミツにしたい
「データの入ったUSBの行方は?」

 成瀬が畳みかけるように質問する。

「……ポケットに入れてました。その先は、知りません」

 真理子の目にも明らかに、成瀬の顔色が悪くなるのがわかった。


「これはもう、黒だと思った方がいいな」

 成瀬は真理子の耳元でつぶやく。

「しかし、証拠がない……」

 成瀬は腕を組むと、目頭を押さえながら苦しい声を漏らした。

 真理子はパソコンの画面をじっと見つめる。


 ――メールは確認できない。ダウンロードしたファイルも、削除されている。……残るは。


 真理子は、はっと顔を上げるとマウスをクリックした。

 デスクトップに表示されているブラウザを開く。


 ――消えてないで……。


 祈るような気持ちと、震える手でブラウザのメニュー画面をクリックした。


 真理子は右側に表示されたリストに、すばやく目線を走らせる。

 そして、ある一か所で目線をストップさせた。


「……あった」

 真理子のつぶやくような声に、成瀬を含めたその場のみんなが一斉に集まり、画面を覗き込む。
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