成瀬課長はヒミツにしたい
「あんたに、これあげる」

 しばらくして戻って来た田中さんが、真理子の目の前に何かを差し出した。

 真理子はその手元を、まじまじと覗き込む。

「これ、もしかしてさっきのステッキ……?」

 田中さんが握っていたのは、さっきまで入り口のスペースで検品していた電飾玩具だった。

 真理子は、そっとそれを受け取る。

 スイッチを入れると、ステッキの先のハート型が色とりどりに光りだした。


「女の子の夢が叶う、魔法のステッキだよ。大丈夫、工場長には許可もらってきたからね」

 田中さんは、にっこりとほほ笑んでウインクする。

「まぁ、がんばんな! 若いっていいねぇ」

 田中さんは豪快にそう言うと、真理子の肩を強く叩き、さっと事務所を出て行った。


 真理子は殺風景な事務所の壁に、ピカピカと映るライトをじっと眺める。


 ――私……もう少し頑張ってみても、良いのかな?


 真理子はステッキをぎゅっと握りしめながら、田中さんの後ろ姿を見送っていた。
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