成瀬課長はヒミツにしたい

会見のはじまり

「さぁ、若造。何を見せてくれる?」

 専務は会場の一番後ろで、にやついた口元をゆっくりと撫でる。

 会見の開始時間はもう目前だ。

 腕時計に目をやったその時、慌てた様子で扉を押し開けた人物に目を見張った。


「せ、専務……」

 息を切らしながら、青い顔で入ってきたのは橋本だった。

「お前! 何やってるんだ! しばらく身を隠しておくように、きつく言っただろうが!」

 専務は声を押し殺すように橋本に告げると、鋭い目で睨みつける。

「そ、それが……」

 橋本は動揺を隠せない様子を見せると、震える手で専務の耳元に手を当てようとした。


 その瞬間、会場の電気が暗くなり、正面にスポットライトが当たる。

 司会者のアナウンスが流れ、堂々とした出で立ちで社長が現れた。

 社長は会場内に一礼すると、座席の前に立ち、おもむろにマイクを取り上げる。
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