成瀬課長はヒミツにしたい
「え? 真理子を秘書に?!」

 柊馬は洗い物をする手を止めると、驚いて振り返った。

「そうだよ。専務の騒動以降、真理子ちゃんに対する上層部の評価も上がってる。柊馬だって、真理子ちゃんなら十分できるって、わかってるでしょ?」

 明彦は笑ってテレビを見る乃菜に、目を向けながら声を出す。


 騒動の後から、明彦はなるべく早めに家に帰るようになっていた。

 乃菜がしばらく親戚の家に預けられたこともあり、不安が大きいのではないかという、柊馬からの提案のためだ。

 それもあり、柊馬も以前のように家政婦業を再開し、真理子は時々手伝いに入るというスタンスに戻っていた。


「それはわかってる。でも、システム部は佐伯も抜けてるんだ。真理子まで異動させたら、業務が回らなくなる」

 柊馬は濡れた手をタオルで拭くと、明彦の前に腰かけた。

「そこは人事部の腕の見せ所でしょ? とにかく、真理子ちゃんは異動させるから」

 明彦は頑として反論は受け入れない。
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