成瀬課長はヒミツにしたい

新しい環境

「あの子、社長狙いだったんだぁ」

「ほんと、ある意味すごいよね……」

 秘書課の奥の席から、ひそひそと話をする声が聞こえる。

「でもまぁ。秘書っていうより、家政婦要員なんじゃない?」


 あははと笑う声を背に、真理子はホワイトボードの自分の名前の横に“社長室”というプレートをかけた。


 真理子が社長秘書になってしばらく経つ。

 デスクは秘書課とは別室にあり、社長室に隣接した社長秘書専用の部屋だった。

 業務は、第一秘書の小宮山(こみやま)という男性と一緒に当たっている。

 社長は社外に出ることが多く、そのほとんどは小宮山が同行。

 真理子の仕事は、スケジュール管理や資料作成などのデスクワークが主だ。


 真理子は探していた資料を手に取ると、女性社員たちの会話は聞こえないふりをして、秘書課の扉をそっと閉じた。
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