成瀬課長はヒミツにしたい

心痛

 カーテンの隙間から朝日がそっと差し込んでいる。

 真理子は、ぼんやりと目を覚ますと、ゆっくりとベッドから身体を起こした。


 真理子と成瀬が、家政婦に入らなくなって、しばらく経つ。

 真理子は隣で寝息を立てる成瀬の顔を覗き込むと、そっと寝室を出てリビングに向かった。


 リビングの窓からは、青空とすでに昇りだした太陽が覗き、その日差しに思わず瞼を閉じる。

 するとカチャッとリビングの扉の開く音がして、まだ眠そうな顔の成瀬が入ってきた。


「おはよう」

 成瀬は乱れた髪をくしゃくしゃとかき上げながら、窓辺に立つ真理子に近づく。

 そして、そっと後ろから優しく真理子を抱きしめた。


「ごめんなさい。起こしちゃいましたね」

 真理子は、身体に回された成瀬の腕をぎゅっと両手で握る。

「いいや。俺も気になってたから……」

 成瀬の声に、真理子は小さくうなずいた。


「お天気になって良かったですね」

「そうだな」

 二人はそれ以上言葉にせず、ただ静かに雲が流れるさまを見送った。
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