成瀬課長はヒミツにしたい

突然の暴露

「小宮山さんって、すごい人ですね」

 真理子は成瀬と並んで廊下を歩きながら、小さく声を出した。

 成瀬は真理子の言葉にうなずくと、そっと顔を向ける。

「そうだな。秘書として、本当に明彦の事を良く見てると思うよ。悔しいけど、俺も敵わない」

 成瀬はそう言いつつも、顔は嬉しそうにほほ笑んでいた。


 ――社長の事を大切に思ってくれる人がいることが、柊馬さんも嬉しいんだろうな。


 今まで心のどこかで、社長を側でサポートできるのは、成瀬だけだと思っていた。

 でも実際にはそんな事はなかった。

 社長を支えてくれる人は、他にもたくさんいる。

 それを社長にも知ってもらいたい。


「じゃあ、また後でな」

 成瀬は真理子に軽く手を上げると、人事部のあるフロアへと戻って行った。


 あの打ち合わせ以降、創業記念イベントの準備は、小宮山を中心とした秘書課で秘密裏にすすめられた。
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