成瀬課長はヒミツにしたい

創業記念イベント

 真理子は会場の入り口に立つと、腕時計に目をやる。

 イベント会場には、続々と社員やその家族たちが集合している。


 今日はビュッフェ形式で食事が用意され、子供たち向けにはお祭りのゲームコーナーも設置された。

 真理子が中を覗くと、サワイの電飾玩具を片手に、はしゃぐ子供たちの声が聞こえている。

 やはり子供の嬉しそうな顔は、場の雰囲気を和ませてくれる。


 真理子が顔をほころばせていると、ポケットに入れたスマートフォンが震えた。

 真理子は慌ててポケットに手を入れスマートフォンを取り出すと、小宮山からのメッセージを表示させた。


 “ホテル入り口に到着”


 その文字を見るとすぐに、真理子は成瀬と顔を見合わせ、一旦入り口の扉を閉じて社長の到着を待つ。

 何も知らされていない社長は、どんな顔で現れるのだろうか。

 きっとホテルの入り口には、今日宴会場を使用する団体名が書かれた看板が立っているはずだ。


 ――社長だったら、すぐにサワイの文字に気がつくだろうな。
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