成瀬課長はヒミツにしたい

謎のイケメン

「デザイン会社から、あがってきた案がこの三パターンで……」

 真理子は、打ち合わせスペースで卓也の声を聞きながら、同じように耳を傾ける成瀬の横顔をチラッとうかがった。

 ここ数日は手が足りているからと、家政婦業はお休みになっている。


 ――乃菜ちゃんのパパが、帰って来てるってことかな。


 真理子はそんなことを考えながら、もう一度そっと成瀬の横顔を盗み見る。

 いつも通り整った成瀬の顔の、顎先のラインから唇に目線を移し、ドキッとして目を伏せた。


 初めて家政婦の仕事をして以降、真理子は定期的に家政婦として乃菜のマンションに通っている。

 今では成瀬が残業で早くに帰れない日は、真理子が乃菜のお迎えに行き、夕飯の準備もしていた。

 相変わらず乃菜の父親に会うことはなく、自然と成瀬と乃菜と真理子の三人で食卓を囲むことが多くなった。


 ――結婚って、こんな感じなのかな。


 まるで家族ごっこの様な生活に、真理子は時々勘違いしてしまいそうになる。
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