成瀬課長はヒミツにしたい
「あ! シャボンだま! いってきていい?」

 乃菜はピエロの衣装を着たスタッフが吹く、大きなシャボン玉を見つけると、食べかけのソフトクリームを真理子に渡し、急いで走って行く。

「おい! ソフトクリーム溶けるぞ……」

 成瀬が声をかけたが、乃菜はもう遊びに夢中になっている。


「あれ? そう言えば、柊馬さんは食べないんですか?」

 真理子は、隣でコーヒーを飲む成瀬を振り返った。

「ん? 俺は味見だけでいいから」

 成瀬はそう言うと、突然肩を寄せて、真理子のソフトクリームにかぶりつく。


「ちょ、ちょっと! こ、これは、私のですから!」

 真理子はそう言い、耳まで真っ赤になった顔を隠すように、わざと頬を膨らませた。

「少しくらい、いいだろ」

 成瀬はにんまりと口元を引き上げると、涼しい顔で乃菜に手を振っている。


「もう! 溶けちゃう……」

 真理子はドキドキと早くなる鼓動を感じながら、成瀬がかぶりついたソフトクリームに唇を当てた。
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