成瀬課長はヒミツにしたい
 真理子は建物の中に一歩入った途端、まるで光の別世界に来たような感覚に思わず足がすくむ。

「すごい! すごい!」

 乃菜はさっきから大興奮で、ずっと目を輝かせている。

 成瀬に肩車をしてもらいながら、遠くまで続く光の国を全身で楽しんでいた。


「こんなすごい企画に、サワイライトが関わってたなんて……。ちょっとビックリです。今まで全然わかってませんでした。社員なのに、恥ずかしい……」

 ポツリとつぶやく真理子に、成瀬は笑顔を向ける。

「この企画は、ほぼ社長の独走状態だったからな。当然、上層部の反発も大きかったし、他の社員もきっと真理子と同じだと思うよ」

 成瀬は乃菜をゆっくりと下に下ろすと、肩をぐるぐると回している。

 乃菜は、地面にも映し出される映像を追いかけながら、元気に駆け回りだした。


 ――上層部って、専務の事だよね。そういえば……。


 真理子は「ふーん」と声を出しながら、ふとランチ会の時に、真理子の名前を呼んだ社長の顔が思い浮かんだ。
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