成瀬課長はヒミツにしたい
 卓也は両腕を頭の後ろで組むと、鼻先を上に向けながら、真理子に視線を向ける。

「な、何も、ある訳ないじゃない……」

 真理子は慌てて下を向くと、もごもごと口ごもった。

「本当ですかぁ? あ、彼氏ができたとか?」

 卓也は人差し指をぴんと伸ばすと、わざとらしく明るい声を立てる。

「あり得ないって、わかってるくせに……むかつく」

 真理子は、卓也の顔をじろっと睨みつけた。


 卓也は、あははと笑いながら真理子の肩に、ポンポンと手をかける。

「真理子さんは、俺がもらってあげますから。変な色気、出さないでくださいよね」

「ばっかじゃないの!」

 真理子は、卓也の手をパシッと払いのけると、パソコンの画面に集中した。

「おぉ、(こわ)……」

 卓也はそう言いながら、真理子の横顔をじっと見ていたが、それ以上は何も言わなかった。
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