再会した幼馴染みは犬ではなく狼でした
 温かい湯気の出た美味しそうな雑炊と薬味が並べられた。
 「新田さん。ありがとうございます。いただきます。」

 新田さんの前にも刺身定食が並びだした。美味しそうに食べている。
 「この店に連れてきたのは君が初めてだよ。」

 お茶を差し替えに来た女将の前で話す。
 「え?」
 「女将は母なんだ。」

 驚いて、女将さんを見る。すると女将が笑いながら話し出した。
 「息子がお世話になっています。初めて、会社の女性を連れてきてくれました。それくらい大切な人なんでしょう。」

 なんか、どう答えていいのかわからなかったが、涙が浮かんでしまった。
 「ごめんなさい。そんなつもりで言ったんじゃなかったんだけど。仁史、なんとかしてちょうだい。」
 「彼女、色々あって疲れてるんだ。食事もとれてなかったみたいだし。今日は勘弁して。」

 新田さんがお母様にそう言うと、どうぞごゆっくりといって、下がって行かれた。

 「……ごめんなさい。本当に。いつもすみません。」
 謝る言葉しか頭に浮かばず、鼻をすすりながら食べる。

 「……花崎さん。辛いなら、こっちにしばらくおいで。付き合おうって言ってるんじゃない。親しい友達としてでもいい。君を支えたい。そんな顔で居たらダメだ。亮さんは君がそんな状態だって知ってるの?」
 「知らないと思います。」

 「だよな。知っていて放っているんだったらもらい受ける。」
 「ふふふ。」

 新田さんの優しさを身体中で浴びて、心が温かくなった。
 お母様に紹介して下さったことも彼の誠実さを裏付けた。

 何も言わず、私を見つめている。美味しい雑炊をすっかり食べ終わると、温かいおしるこが運ばれてきた。
 「この子、甘いものが大好きなんですよ。よかったら、仁史の好物も一緒に召し上がって下さい。」
 そう言って、ふたつおしるこのお椀を置いていく。

 「えー、お酒も強いとお聞きしていましたけど、甘いものもいけるんですね?」
 笑顔で聞くと、恥ずかしそうに頭を掻いた。

 「ちぇ、母さんのやつ、余計なことしやがって。」
 そう言うと、美味しそうにおしるこを食べ出した。

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