再会した幼馴染みは犬ではなく狼でした
 
 新田から連絡をもらったときは、偶然その日なら雫に会えそうだと思っていた日だった。
 新田と話して頭が真っ白になり、彼女と会った時、新田の話が本当だったと、後悔と言う言葉では言い表せないほど自分を呪った。

 痩せて、顔色が悪い。見るからに精神的に病んでいた。
 こんな状態になるまで放っておいたことをなじられても言い返す言葉もない。 

 早急に縁談話に片をつけないと雫が危ないと痛感した。

 父は雫と会って、すぐに雫の応援に回ると決めたようだった。

 いい子だなと一言。そして、必ず守れよと言われた。
 原田コーポレーションとの関係は父がなんとかすると言ったが、俺にも責任の一端はある。

 これからの三課で原田コーポレーション以上の取引を作っていけばいいことだ。
 考えている取引先も実はある。

 新田の出張はそのための布石だった。
 あいつはきちんと務めを果たして帰国してくれた。あとの詰めは俺の仕事だ。

 雫を抱いた翌日月曜日。

 思いもしないことが待っていた。原田コーポレーションの社長が来日したのだ。
 優樹菜の仕業だということはすぐに想像が付いた。

 父がなんとかなるよと、肩を叩いて応接室へ招き入れた。
 俺は、優樹菜と一緒に後から入ることになった。

 父がとりあえず先に謝罪するという。
 謝罪なんて父がすべきことではないと言ったのだが、とにかく先に謝った方がいいと言う。

 優樹菜が原田社長の宝だということは普段の様子を見ればすぐに分かる。
 付き合っていたときも本当に喜んでくれていた。

 別れたときは、殺されやしないかと怖かったくらい、娘を溺愛しているのを知っていた。

 俺は、新田を呼ぶと例の取引相手との交渉具合をまとめたものをプリントアウトするように指示した。
 原田コーポレーションと敵対関係ではないが、ライバルに近い会社との取引だ。

 相手の会社は原田の牙城を崩せるならと結構いい値で乗り気になっている。
 こことの取引が始まると知れば、原田を敵に回す可能性もある。

 しかし、原田以上の会社をすぐに取引に使うのは難しい。
 いくつかの会社を取引相手にして、原田に頼んでいたものをすり替えていくしかない。

 父にはまだ公表するなと言われている。

 だが、原田社長との話し合いがプライベートひとつで思いもしない方向へ崩れるとすると、この会社に迷惑がかかる。
 叔父やいとこが舵を取るこの日本本社は、アメリカ支社がタイヤとなって回っている。
 ブレーキがかかるとグループ全体に問題が広がりかねない。

 念には念を入れて準備が必要なのだ。

 
 
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