最後の詰みが甘すぎる。

「興味ないなんてもったいないね。結構チヤホヤされたんじゃない?」
「棋士なんて大概の人は興味ないだろ」

 他の棋士ならそうかもしれないけど、廉璽は違う。
 廉璽の整った顔だちにときめかない女性はいないと思う。
 二重がぱっちりで子鹿のように可愛らしい顔立ちで、その上お肌もツールツル。
 結べそうなほどに伸びた肩にかかる長めの髪を鬱陶しそうに掻き上げる様は、普段から廉璽を見慣れている柚歩ですら時々ドキッとすることがある。
 ……本人には絶対に内緒だ。

「柚歩、せっかく家まで来たんだし指していけよ」

 たっぷりと睡眠をとり満腹になった上にシャワーまで浴びてさっぱりした廉璽は、まるでドライブにでも行くかのように意気揚々と柚歩を誘った。

「えー…。これから春服でも買いに行こうと思ってたのに」

 貴重な土曜の午後を将棋で潰せとでも言うのか。この将棋オタクめ!
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