最後の詰みが甘すぎる。


『土日に開催された名人戦第一局は挑戦者である津雲廉璽三冠が見事、勝利を収めました』

 月曜の朝、女性アナウンサーが弾んだ声で伝えたのは廉璽の勝利のニュースだった。

(そっか。廉璽くん勝ったんだ……)

 廉璽が名人戦第一局に勝ったことを柚歩はこの時初めて知った。
 対局の模様はネットでも配信されているし、土日開催の第一局はその気になりさえすればリアルタイムで追いかけることもできた。
 けれど、柚歩はあえて廉璽の対局を見ないようにしている。

 結果は大体ニュースか将棋連盟のホームページ、あるいは母を通じて知る。
 廉璽はいつも勝とうが負けようが連絡を一切よこさない。恒例のように瀬尾家を訪れ、柚歩と将棋を指していくだけ。

 柚歩はテレビのチャンネルを変え、廉璽のニュースがこれ以上耳に入らないようにした。

 廉璽が棋士達を相手にどんな将棋を指しているのか。どんな風に将棋と向き合っているのか。

 臆病者の柚歩は知ってしまうのが怖かった。

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