君とゆっくり恋をする。Ⅱ【第6話完結しました】(短編の連作です)


——だからこそ、なおさら早くどうにかしないと……!


敏生は対策を考えるどころか、焦りでますますおかしくなってしまいそうだった。


――でも、どうやって?


そして、やっぱりここで行き詰まる。この堂々巡りを、もう何日やっているのか分からなかった。



数日後、夏の力強い日差しのもと外回りから戻ってきていた敏生は、共用フロアのベンダーコーナーで一息ついていたところだった。そこへ、同じように外から帰ってきた河合が、冷たい飲み物を求めてやってきた。


「先輩。週末の花火大会には行くんですか?」


このとき、後輩の河合が投げかけてくれたこの問いは、敏生に一筋の光明を与えてくれた。

週末に行われる花火大会は、スポンサーも多く大々的に宣伝され、この地域では夏一番のイベントだった。この花火大会を口実にすれば、結乃を誘いやすいかもしれない。


「さあね」


いつもなら『そんな、人にもみくちゃにされるだけのくだらないイベント、行くわけねーだろ』と斬り捨てていたけれども、この日の敏生はお茶を濁すような返事をした。


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