White Snow3  前野晴久の苦悩

元カレ疑惑

「うちの倖とはお知り合いだったんですか?」
「ええ。大学のゼミが同じだったんですよ」
「そうなんですか」

こくりとコーヒーを飲んだ梅原さんは口元を緩めた。
「智花にコーヒーを貰うなんて・・・なんだか感慨深いなあ」
と言った。
その言い方が不思議で、どういうことが問うと、

「智花はジャンケンがめちゃめちゃ弱いんですよ」
「は、はあ」
「ゼミの仲間で飲み物を買うんですけどね、男気ジャンケンして買うんですよ」
「男気ジャンケン・・・ですか?」
「知らないかな?ジャンケンで勝った人が奢るんですよ」
「ああ」
「それで、智花はジャンケンが弱いから絶対に奢らないんです」
「へえ」
「一度、負けた人が買おうって言ったら、クスッ」

「『いいよ』って言ったくせに物凄く悲しそうな顔して・・・くっくっくっ・・・その顔が『絶対負ける』ことを確信してるって感じの顔で・・・くっくっくっ・・・それがめっちゃ可愛くて・・・くっくっくっ・・・やっぱり男気にしようってなったっていう」
「・・・」
「だから智花にコーヒーを貰えるなんて奇跡みたいで」
と笑った。

『めっちゃ可愛い』ですか。
確かに智花は可愛いよ。
想像するだけでも可愛いのが分かるよ。

なんだろう・・・めちゃくちゃ悔しいんだけど。



はあ・・・さっさと商談終わらせてお帰り願おう。




商談を再開してすぐ、ドアがノックされた。
だれだ?と思いつつ、お詫びを言って席を立つ
「はい」
とドアを開けるとそこに立っていたのは智花だった。

「え?どうしたの?」
と驚き、問う。

智花は急いで戻ってきたらしく、肩で息をしている。
「すみません。勉強のために見学させていただいてもいいですか?」
と言うではないか。

は?なんで見学?

こんなことを言う智花は初めてで俺は動揺した。

「私は構いませんよ」
と梅原さんが言うのだから、俺が断るもの変だ。

平静を装って、了承すると智花は俺の横の椅子に座った。

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