この恋がきみをなぞるまで。
『千里』





夏休みが明けて最初のホームルームで、後期の選択授業の説明を受ける。

席の近い人同士で話し合ったり、事前に決めていた人もいるようで、各々希望の科目を用紙に書いて提出した。

昼休みのあとにはクラス全員が希望通りの科目で決まり、早速5、6限で移動し初回の説明と授業を受けることになる。


涼花は情報の授業を取ると言っていた。

パソコンは覚えていて損はないと思うけれど、時間制限のある試験内容がこの手では難しくて、同じ授業は諦めた。


4限目が終わり、提示されたプリントで移動する教室を確認していると、担任の先生が後ろのドアから顔を出す。


「城坂、書道は希望者が定員以下だったから、そこに書いてあるのじゃなくて書道コースの教室に変わってるからな」

「あー、わかった」


廊下側の後列に席のある城坂くんは、顔だけを先生に向けて欠伸混じりに返事をする。

名指しされたのが城坂くんだけということは、このクラスで書道を選んだのは一人。

もともと書道科に在籍している生徒は別の科目を選ばないといけないし、希望する人数も少ないのだろう。


ぞろぞろと移動していく人の波が引いてから、わたしも教室へと向かう。

城坂くんは自前の道具があるから、用意をしているように見えたけれど、あの桐箱を持っているかどうかまでは確認できなかった。

< 31 / 99 >

この作品をシェア

pagetop