郡くんと甘いビターチョコレート
「……ごめん、立花」
普段私に向けられることのないその声が。
いつも輪の中心にあるその声が好きなのかもしれない、と。
ごめん、なんて言葉と一緒に引き寄せられた。
密着しているのに嫌な感覚は何ひとつなくて、自分の心臓がドキドキと音を立てることしかわからなくて。
どきどき、どきどき、全身いっぱいに体の中から揺れるようにきゅうってなる、味わったことのない感覚。
「男、怖いよね、ごめん」
ごめんと繰り返す割には私を離そうとしない。
どうかそのまま、離さないでほしい。
電車内の嫌な感覚とは全然違う。声と同様あったかくて、離したくない。
__ずっと、こうしていてほしい。
そんなふうに思った時にはもう遅い。
その日、私の世界が変わった日。
クラスの太陽に助けられた私は一瞬で、恋に落ちた。