開けずの手紙ー完全版ー/長編呪い系ホラー【完結】
その3


結局、国上と和田の事前検分は40分程度で、特段学校側から何かを問われることなく、無事、校門を出ることができた。

二人はそれぞれで乗りつけてきた車を停めていた、高校近くの公園脇に戻って最終確認を行った。

「では、あさっては夜8時ですが、30分前にここで落ちあいましょう。手島さんはご一緒にですか?」

「はい。オレの車に乗せて。ヤツ、先生には是非、直にお礼を述べたいと言ってました。前任校の女生徒、国上さんらのアドバイスでうまく乗り越えられたそうなんです」

「そうですか…。それはよかった」

「なんか、三浦美咲ってその生徒、今回の友人間のトラブルで、友情のありがたさを知ったとかって言ってるそうで。もし、呪いに掛けられても友達は絶対に犠牲にしないと、決心できたそうなんです。正直、最初はだれか憎たらしい人間をって気持ちもあったそうで…」

「…」

この時の霊能力者である国上は、どこかセンチメンタリックな表情を浮かべ、小刻みに唸いていた。
三浦美咲に降りかかった、”この最中”をかみ砕くように…。


***


「…先生、私からもお礼を言わせてください。彼女の目線で力になってくれてありがとうございます」

「いやあ…、あのアイデアは、それこそ鷹山さんのサイトに転居先不明出で戻ってくれば、呪いの拡散先を阻止できるという実例の提供があったからこそですからね。はは…。でも和田さん、これって、鬼島の作ったフィールド内での人間ドラマになりますね」

”言えてる…。ひょっとして、鬼島はこういった向きの展開も見たかったのだろうか…”

ふと、和田はそんな疑問が頭に浮かんだ。

和田は、鬼島の母から聞いた彼の生々しい諸々を知った今、呪いに取り憑かれたマニアとも形容できる鬼島則人という奇異極まる怪物に、フツーのメンタルを持ち得た余地をどこか欲していたのかも知れない…。





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