かくも激イカレなオンナたち❷/”どうしてくれるのよ、この熱っ狂しい血…ってこと!”
トライアングル模様/その10
麻衣



あんこう先輩は、しばらく目を閉じ眉間にシワ寄せて、考えにふけっていた

あーん、寝ちゃうんじゃないだろうか、この先輩‥

「あのう、先輩、起きてますか?」

「バカ!寝れる訳ねーだろが。考えてんだよ、私は。何しろ相手が相手だからね。私だって死にたくねーよ。アンタみたいなイカレもんとは違うんだからさ。まあ、もう少し思案よ」

はは、この深海魚の先輩はいいや

今の状況の私なんかは、こんな変人が妙に心を許せるわ(苦笑)


...

「なら、麻衣、条件付きでやってやろう」

あんこう先輩は承諾してくれた

ああ、よかった

寝ちゃわなくて…


...


「それにしても、お前、”戻って”間もないのに北田久美を改心させて、南玉の内紛を収めたらしいじゃないか。事前にマキへも話しつけた上で頭下げて、幹部連中の逃げ道塞いじゃったんだろう。大したもんだね。どうなんだ?南玉に復帰したら。お前が戻れば、各校の方もまとめられるだろうに」

「その気はゼロですよ。ただ、やはり私でも南玉に愛着あるんです。今ガタついてちゃ、砂野郎に付け込まれますから。まあ、みんなで盛り上げってってもらえれば、嬉しい。そんなとこですよ」

「…」

あんこうは何か言いたそうだな…


...


「麻衣、それは南玉連合には、もう横田競子がいないからなんだろう?お前ほどの女が、そんなに横田と競いたがる源泉はなんだい?コンプレックスからか?それとも生理的に好かないとか、そういうもんなのか?」

「いつも思うんですが、理由はよくわかりません。ただ、ムキになれる最高の相手だと…。先輩、今、ヤツは私を殺したいくらいに憎んでるんですよ…」

「そうらしいね。横田は人望の厚さじゃピカ一だし、凄い評判だ。ピュアで健康的なそんないい子をお前、クスリの道に導き、警察沙汰に巻き込んでさ。あの子、退学処分を喰らったってな。そこまで汚して、お前、心が痛まないのか?」

「先輩に言われたくないですね。ああ、せっかくだ。もう一つ教えましょう。おけいとは一回限りだが、レズってるんですよ。ふふ、誘ってきたのはヤツです。どうです?こんなんで、何か感想ありますか?」

「そうなのかい、なんてこった…」

あんこうは首をにゅっと伸ばして、本当だかわからないが、えらく驚いた素振りを見せた

”そこまで汚すかよ、お前”って言いたかったかもね、先輩

でも、誘ったの私じゃないしねえ…


...



その後、あんこうは煙草をくわえながら、私の顔を覗き込んで言った

「麻衣、横田が通っていた滝が丘高校では、今、退学取り消しの嘆願運動が起こってるらしいぞ。徐々に広がりを見せてるってよ。そのスローガンは何だか知ってるか?」

「いいえ。なんです?」

「本郷麻衣と一緒にするなだ…」

「はは、上等ですね。光栄ってもんです」


...



おけい、やっぱりお前は最高の”相棒”だ

私からも復学、祈念するぜ








本エピソード
ー完ー
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