本当はイケメンが苦手です~レンタル彼氏編〜

予想外のスパダリ登場!

いよいよクリスマスイブ当日!

3日前、レンタル彼氏の最終事前打合せのメールで、当日派遣される彼の写真と簡単なプロフを送ってくれた。
私の相手をしてくれる方は三上亮次さん、33歳。身長183cm。
見た目もさわやかで優しそうな男性だ。

せっかくの5年ぶりのデート!
思わず張り切ってしまった、、、
お金もめっちゃ使った。。

まずこの日のために3週間前からダイエットに励み、3キロ痩せた。
日頃しないメイクもがんばろうとYou Tubeを観てはコスメを買い漁り、毎日練習してなんとかまともに出来るようになった。
お洋服もコートもこの日のために新調。
もう何年も履いたことのなかった細いヒールのロングブーツも買った。

ああ!何年ぶりだろう!
この感覚!
久しぶりのワクワク感!
ドキドキする!
デートのためにこんなに頑張るなんて(*´ω`*)
相手の人に釣り合うかはわからないけど、恥ずかしくないくらいにはおしゃれできてるはず!
なんか凄くふわふわ浮足立っておちつかないし、ちょっと気恥ずかしくもあるけど、嬉しくもある。
正直、この日を凄く楽しみに毎日頑張った。

待ち合わせは18時。
私の住むマンションにほど近いショッピングモールの駐車場に車で迎えに来てくれる事になっている。
事前に車の色と車種、彼の顔写真をもらっているので、行き違いになるような不安はなかったが、お迎えの挨拶時に彼から身分証の提示と、お互いに合言葉を交わすことになっているとメールで教えられた。
このショッピングモールはマンションから徒歩5分のところにあるのだが、楽しみな気持ちと緊張が相まって、落ち着かず、17時半すぎには来てしまった。。。

どうしよう!ヤバい!手先が震えるっ!

約束の時間まではまだ20分もある。
いつもならあっという間に過ぎてしまう、たった20分という時間も、今は凄く長く遅く感じてしまう。

そして、約束の18時。
1台の真っ赤なフェラーリが私の前に停まった。
は?え?なに?なに?
黒のエクスファイアじゃないの?
え?だれ?あたしじゃないよね?
とりあえず避けたほうが良い?
などと、どきまぎパニクってその場から立ち去ろうとすると、運転席の窓が開き、中の男性が声を掛けてきた。

「美咲ちゃん?美咲ちゃんだよね?俺、レンタル彼氏の冬馬です。」

は?え?なんで?
写真の人と顔違うくない?!
え?名前も違うよね?
え?は?なに?どゆこと?

フェラーリの扉が開き、スラッと背の高いスーツ姿の男性がこちらを見ながら降りてくる。
そして、訳が分からず立ちすくむ私の側に近づき、身分証を見せながら名刺をくれた。
その名刺には、私が依頼したレンタル彼氏の運営会社の社名と肩書き、そして[関家冬馬]と名前が書かれていた。

「こんばんは! ビックリしたよね?先にちゃんと連絡しとけばよかったんだけど、ギリギリの急な変更だったから。間に合わなくて。驚かせてごめんね!」
未だに状況が掴めず、戸惑う私の頭を彼は優しく撫でながら、笑顔で私の顔を覗き込む。
「3日前に送った最終確認のメールに書いてあったと思うけど、一応ルールだから、合言葉言ってくれる?」
私は静かに頷き、緊張でうまく声が出ないまま「トキメキを」と小さな声でつぶやく。
続けて彼が「このクリスマスイブに」と言い、「ありがとうね!」と微笑んだ。

この彼の余裕たっぷりな対応とは真逆に私はまだパニック状態継続中。

え?!待って!
じゃあ、この人が今日の私のお相手の人ってこと?
身分証見せられて名刺ももらったし、合言葉も合ってる!
つか、名刺の肩書き【代表取締役】って、、、
社長じゃん!!
なにそれ〜(TдT)
もうわけわかんないんですけど〜!

「ちょっと待っててね!車ちゃんと停めて直してくるから」
そう言って、彼は足早に車に乗り込んで行ってしまった。

えー!何?今の何だったの?
何が起きたん?
え?は?
頭パンクしそう!

いや!待て!
美咲よ!一旦落ち着こう!落ち着け!
深呼吸、深呼吸。
吸ってぇ!吐いてぇ!
吸ってぇ!吐いてぇ!
ふぅ~。

・・・・。

いや、つかフェラーリって!
めっちゃ高級車やん!
しかもめっちゃ長身イケメンさんだったよね?
なにそれ!スパダリ?!

いや~キャ〜!
ヤバい!ヤバすぎる!!
なんでそんな人が私の前におるん?
なんで?なんで?
神様助けて〜!
私の脳みそキャパオーバーです。。。

そんなこんなで色々考えて未だパニクってる間に、彼が戻ってきた。
「ごめん!待たせたね。先に事情も説明したいし、レストランの予約時間までちょっと時間があるから、そこのスタバでも行こっか?」
私は無言で頷く。
「大丈夫?顔真っ赤だよ。涙目だし。寒いの?具合が悪いわけじゃないよね?」
そう言って、私の顔をまた覗き込んできた。
(ギィーヤー!やめて!覗き込まないで!顔近すぎ!緊張するから!)
思わず顔を両手で塞ぎ、首を縦に思いっきりブンブン振ってしまった。

私は身長が160cm弱。
たぶん彼は185cm位あるから、暗い中でうつむく私の表情を確かめるには覗き込むしかないんだけれども!

だけれども!!
恥ずかしすぎる!!
めっちゃドキドキするからやめて!
やっぱりイケメンは苦手です!

誰かこの方にソーシャルディスタンスを教えてあげてください!!

「フフ!美咲ちゃんって可愛いね!」
彼はそう言いながら、またもや私の頭をポンポンする。

「ねーねー!美咲ちゃん。いきなりだけど、肩抱きしめてもいい?嫌だったら言ってね。」
そう言って、彼は私の右側に立ち、彼の長く大きな左腕でそっと私の肩に手を掛け、抱きしめるように引き寄せた。

私はといえば、その問いかけに答える余裕も抵抗する余裕もなく、頭の中がフリーズしてされるがまま。

頭噴火!もう何も考えられません!
マジでキャパオーバーです!

そんな私の様子を知ってか知らずか、彼はチラチラと私の顔を覗いてはニコニコし、私を抱き寄せたまま、スタバへ向かった。
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