素直になれない私たち
谷口先輩

谷口先輩の第一印象は最悪だった。



高校に入学してまもなく、私たちは今年と同じように親睦会と称して
同じクラスになったみんなで駅前のカラオケ店に行っていた。


「ここうちの学校の御用達なんだって。今2年生のクラスも来てるみたい」


席が隣りで、一番最初に話しかけてくれたのが晴夏だった。
晴夏はうちの中学にはいなかった華やかなタイプで、モデルのような
モテ系の女の子に声を掛けられた私はさっそく浮足立ってしまったのを
覚えている。


「さっき早速中学の時の先輩に会ったの」


その人この学校でもけっこう有名な人でさ、と晴夏は楽しそうに話して
くれた。
谷口蓮というその2年生は、いわゆる女子人気の高いグループの中でも
トップクラスで、中学2年の頃から彼女が途切れたことがなく、女子大生と
付き合ってたこともあるという噂も。都合が合えば(=彼女がいなければ)
とりあえず来るものは拒まず付き合ってみる、という方針のようだ。
見た目の好みはないのか、と心配にもなるけれど、晴夏いわくレベルの
高い男のところにはそれなりにレベルの高い女が来るからね、とのこと。

まあ要するに、私には関わりのない人種ということはわかった。


「さっき友達でも連れて歌いに来いよっていってたから、よかったら後で
あかりちゃんも行こうよ」


「私なんかが行ってもいいのかな」


「全然大丈夫だよ、ていうかむしろあかりちゃんみたいに先輩に興味なさ
そうな女の子、連れてったら喜びそう」


部活に入るつもりもなかったし、もともと高校生活で先輩と関わること
自体ないと思っていたので、この時点では不安と期待が半々という気持ち
だった。


< 22 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop