素直になれない私たち

着々と自分の順番が近づいてくる。

私より先に晴夏が走り出した。軽々と5つのハードルを飛び越え、あっと
いう間にゴールしてしまった。私もイメトレではあんな感じに飛ぶ予定
なんだけど、まあどう頑張っても足の長さが違うので、とにかく無事に
ゴールへたどり着きたい。そう思っていた。


「次、三浦さん」


2列あるうちの左側に立ち、軽くはい、と返事をしてスタートの合図を
待つ。多少遅くてもしょうがない、1台目のハードルを飛んだらあとは
左足で踏み切るように足を合わせていこう、と決めた。

ホイッスルが鳴ってスタートし、予定通り1台目のハードルを何とか
飛び越えると、3台目までは予定どおり上手く足を合わせて飛んだ。

私にとってのゴールは無事5つのハードルを飛びきることだ。
しかし4台目のハードルを目の前にして踏み切ったのは右足だった。
上手く歩数を合わせることができずに慣れない右足で踏み切ったため、
左足が引っかかって私はハードルごと前に倒れこんでしまった。


「あかり!」


晴夏を先頭に先生や近くにいた子たちが慌てて駆け寄ってくる。
大きな音を立ててしまったので、反対方向で50メートル走の計測をして
いた男子も騒ぎに気づいてざわざわし始めた。派手に擦りむいた手を
見て、血が滲んでいるのを確認したらなぜか急に痛みも感じ始める。

大丈夫、といって立ち上がろうとしたら左足首に痛みが走って立ち上が
れない。そして晴夏が先生に私が一緒に、といってくれている途中で
私の体がふわっと宙に浮いた。



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