私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
大学に着き、ゆっくり車が止まる。

「着きましたよ」
河冨が運転席を降りて、後部座席のドアを開ける。

蒼志が降りて、星那に手を差しのべた。
「ほら、星那!」
「うん!」

蒼志の手を握り、車から降りる。
すると━━━━━

ゴッ!!!と鈍い音がして、星那が額を押さえた。
「いったーい!!?」

「星那(お嬢様)!!?」

ドアの縁に頭をぶつけたのだ。
「大丈夫か!!?今、スッゲー音したぞ!?」
「う…うん…」

「デコ、見せて?」
ゆっくり、星那の前髪を上げる。

「ん…」
「ん。少し赤くなってるが…大丈夫みたいだな…!」
「うん…大丈夫」

「よし、行くぞ!
ほら、手!」
今度は、慎重に降りる。

降りると、河冨が星那に言う。
「お嬢様、失礼します。
少しの間だけでも………」
そう言って、星那の額に冷えピタを貼った。

「あ…ありがとう!」
「お前、そんなもん持ってたの?」

「当たり前です。
僕は、星那お嬢様の忠実な執事ですので!」

とにかく、星那に捨てられないように努めるしかない。
自分が、必要な人間だと認識してもらう為に。

一生、傍にいる為に━━━━━━

「……………お前も大変だな」

「は?」

「別にー(笑)」

河冨の想いを知ってか知らずか、クスクス笑う蒼志だった。


「━━━━━楽しみだなぁ~」
講義室で、並んで座っている二人。
星那は自身の右耳に触れながら、微笑んでいた。

「ピアス?」
「うん!どんなのがいいかなぁー!」

二十歳の誕生日に、ピアスホールを開けた星那。
なかなかホールが安定せず、漸く安定したので一緒にペアのピアスを買いに行こうと約束していたのだ。

「星那が良いのにしな?」
「でも、今あーくんがつけてるピアスのお揃いでも良さそう!」

「星?」
「うん!綺麗だよ、その星!」

「まぁな。察しの通り“星那”の星だしな!
それに、俺の好きなブランドのロゴも“星”だし。
もう、これっきゃないと思ってさ!」

「じゃあ、私もそれがいいな!」

「ん!じゃあ、終わったら買いに行こうな!」

「うん!河冨に、連絡しておかなきゃ!」
そう言ってスマホを取り出す。

「あ、あぁ…そうだな。
……………また、あいつかよ…」
ボソッと呟く蒼志。

蒼志の呟きが聞こえていない星那は、いつものように河冨にメッセージを送るのだった。
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