私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
ただ、嫉妬してほしかったんだ
年が明け、蒼志は父親の会社の新年会に出席させられていた━━━━━━


代表取締役・社長である父親の挨拶。

「━━━━今年も、皆さんの力をお借りしながら、更なる発展を目指していきたいと思ってます。
一緒に頑張っていきましょう!
そして、我が息子・蒼志も来年は大学を卒業します。
卒業後我が会社に就職する準備のため、少しずつ仕事に参加し覚えていきたいと考えているようです。
愚息ですが、どうか皆さんの力を貸していただきたい。
…………蒼志、壇上に上がってこい」

少しめんどくさそうに、父親の横に並ぶ。

「親子共々、今年もよろしくお願いします!」

蒼志にも頭を下げさせるようにして、父親は頭を下げた。

社員達からは、大きな拍手がおくられた。



その後、それぞれ食事や談笑をしている社員達。
社員達の興味は、蒼志だ。

「カッコいいわよね~」
「話しかけに行っちゃう?」


「━━━━━━親父、帰っていい?」
「は?」

「挨拶したからいいじゃん」
「いいわけないだろ?
最後までいろ!」

「………」
父親に一喝され、ふて腐れるようにその場を離れた蒼志。

喫煙所へ行き、煙草を吸い出した。
スマホを操作し、星那に電話をかける。

『あーくん!』
「星那ー、会いてぇよぉー」

『パーティー、楽しくないの?』
「全然!楽しくねぇ!」

『そうなの?社員さんとお話したりして、親睦を深めなきゃ!』
「………」

『あーくん?』
「星那はいいの?」

『え?』
「俺が、星那以外の女と親睦を深めて」

『え……』

そこにタイミングいいのか悪いのか、女性社員が声をかけてきた。
「蒼志さん!」

そこ声は、電話口の星那の耳にも入っていた。

“星那に嫉妬させたい”

そう思った蒼志は、わざと星那にも聞こえるように言った。

「お疲れ様です!」
「あ、ごめんなさい!
お電話中でした!?」

「はい。でも、大丈夫ですよ?
どうかしました?」

「向こうでお話どうかなって!」

「あ、はい。すぐ戻ります!」

「じゃあ、待ってますね!」

女性社員を見送り、再び通話に戻る。

「ごめん、星那。
俺、行かねぇと……!」
『え……あ…う、うん…』

星那の声が、切なく沈んだ。
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