不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
「頑張って、律くん」
たくさんの声に埋もれて誰の耳にも届くことのない言葉が、スッと消えたと同時。
「……っ!」
騒めくコートの端から、律くんは私の方を見て手を振っていた。
私に対してではなかったら恥ずかしい、という気持ちを押し込んで、咄嗟に立ち上がって焦りながらも敬礼ポーズでお返しした。
「い、伊都ちゃん!?何やってんの!?」
「ポーズは間違えましたが、気持ちは伝わったかと……!」
「う、うん?」
試合開始まで、あと―――。