気づけば、吸血王子の腕の中【上】
でも、今は違う。
微かな熱に意識を向け、だいぶはっきりしてきた頭でそんなことを思う。
お母さまよりもっと大きな、穏やかな優しさを、もらっている。
今私に触れている手の、持ち主に。
ここでへたばってしまえば、こんなにいろいろしてくれるダレル様の足枷となる。
それだけは避けたい。
だから、自分で解決しよう。
そして上手くできたら、褒めてくれるかもしれない。
よくやったね、すごいね、って。
認められれば、図書館へ一人で行かせてもらえるかもしれない。
考えを纏め上げると、なぜかあの図録が脳裏に浮かんだ。
そう、あそこだ。
あの泉に行けば、ダレル様に迷惑をかけずに元気になれる。
名案だ。
一石二鳥どころか、三鳥、四鳥もある。
そう思うと、どうしても開かなかった、石のように重たい瞼がゆっくりと上がった。