気づけば、吸血王子の腕の中【上】
いつの間にかこんなにも欲深くなってしまった。
ダレル様が優しくしてくれることを、愚かにも “当たり前” と思ってしまった。
ダレル様が一番気にかけてくれるのは、自分だと。
ここを出て、誰も探さなければ、探してくれなければ。
一人で暮らそう。
これまでもそうしてきた。
大丈夫。
太陽に当たらなくなって久しい。
もう、力も出ない。
それなのに、気が狂ったように叫びたくなって頭だけは暴走する。
自分でも収集のつかなくなってしまったぐちゃぐちゃの思考を隠すように毛糸の帽子を深くかぶり、髪を詰め込む。