空に一番近い彼

◇◇◇

私は朝からソワソワしていた。
普段人と会うこともないので、ちゃんとしたメイクも久しい。
けれど、今日はビューラーも使ってみた。

カーテンの隙間からまだかなぁと覗き込むも気配はない。時計を確認するとまだ30分前だった。同じ行動を繰り返す。なかなか時が進まない。

カーテンを覗き込むのももう何度目だろうか。自分がとても滑稽に見えた。

庭の駐車場にミニバンと軽トラックが止まった。私の位置からはちょうど軽トラックの運転席が見える。
作業着姿の彼が車から降りてきた。
胸が高鳴る。呼吸を整え玄関ドアを開けた。

彼がこちらを向いたので、軽く会釈した。
小走りで私のもとにやって来る。

《おはよう》ゆっくりはっきり口を動かしてくれた。

私はおはようの意を込めて微笑んだ。

彼は車から荷物を下ろしている男性を指差しながら
《オヤジ》と教えてくれた。

ちょうどお父さんがこちらを向いたので、会釈をすると、私の方に向かって歩いてきた。
そして、彼もまた《おはよう、きょうはよろしく》と私がわかるように大きな口の動きをしてくれた。
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