月下の逢瀬
夕方から降り出した雨は、夜更けになっても止まなかった。
窓ガラスを打つ雨音は激しくて、あたしはぼんやりとそれを聞いていた。

明かりを消した薄闇。
その中で、ちかちかと点滅を繰り返すケータイが見える。
オレンジからパープル、ピンクに変わる光。
その鮮やかな光が切なくて、逃げたくてぎゅっと目を閉じた。


どれくらいの時間をそうして過ごしたのだろう。
雨音に混じって、コツコツというガラスを叩く音がした。


ゆっくりと目を開けると、半分開いたカーテンの隙間に人影を見た。

影だけで分かる。
あれは、愛おしくてたまらない人。


「理玖……」


理玖が濡れちゃう。
反射的に窓に駆け寄って、鍵を開けていた。


「メール、気付かなかった?」


「え……、えと」


少し尖った声に、曖昧に答える。
理玖は返事を待たずに室内に入ってきた。


「すごいな、雨」


「う、うん……。
あ! 理玖、すごく濡れてるじゃない」


理玖の髪からは、ぽたぽたと雫が垂れていた。
慌てて近くに置いていたタオルで理玖の頭を拭こうとすると、理玖にひょいと抱き抱えられた。

そのままベッドに倒れ込む。


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