月下の逢瀬
「じゃあ先生、ヒマ? 一緒に回ろうよー」


結衣が先生の腕を取ってぐいっと引いた。


「や、学年主任に見つかると怒られるからなあ」


困ったように笑う先生が、ちらりとあたしを見た。


「いいじゃん。見つかったら見回りのフリすればいいんだしっ」


「んー、じゃあ、少しだけな? あんまり長くはダメだから」


先生の言葉に、結衣がぱっと顔を明るくさせた。


「じゃ、とりあえず2ーBに行こ!」


「……2ーB?」


「ほら、コウタにね、浴衣見せに行くの」


先生の腕を掴んだまま、結衣が歩き出した。


「ああ、なる程。彼氏に見せたいんだ」


先生が横を歩くあたしを再びちらりと見た。
それに気づいたけれど、あたしは前を向いたままでいた。


「やっぱ見せたいじゃん? あ、結構混んでるかも」


結衣が指差した2ーBの前は、人だかりができていた。
その入り口に、声を張り上げて呼び込みをしているコウタくんの姿。


「コウタだ! 真緒、先生、先行くね」


ぱたぱたと走り出した結衣。
あたしは横にいる先生とふいに二人になってしまったことに緊張した。


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