愛よりもお金が大事。
3
美里の代わりに一課に移り、2日が過ぎた水曜日。


早速、出会いのチャンスが訪れた。


11時から、あけぼし商事との商談。
元々、【笑い鳥】関係で既にわが社とは取り引きのある会社なのだけど。
新たに、台湾産の冷凍カジキマグロの取り引きの商談。


うちは営業を受ける側なのだけど、どれだけ安価で仕入れられるかが、私が営業としての仕事。
1キロ当り、千円を切れるかどうか。


「あけぼし商事さんとは、もう10年来のお付き合いですよね?
わが社としては、あけぼし商事さんとはこの先もずっとお付き合いをしたいと考えてまして、
まだオフレコですが、来年、新たにわが社は新規事業として和食系のレストランを関東エリアで展開して行く予定でして。
今回、この取り引きであけぼし商事さんに頑張って頂けたら、新規事業の担当のものに、あけぼし商事さんを推薦させて頂けるかもしれません」


うちの新規事業の取り引きは、是非ともあけぼし商事としては欲しいはず。
海外産の魚介類だけじゃなく、精肉類等も。


「実は、上司から千円は切るなと言われておりまして。
一度、わが社に持ち帰り検討させて頂けませんでしょうか?
その新規事業の話も伝えたら、上司から良い返事が貰えるのではないか、と思うのですが」


そう、私の目の前で爽やかな笑顔を見せる商社マンの名前は、七種遼太(さえぐさりょうた)。
歳は、推定30代前半。左手に指輪なし。
顔は普通かもしれないが、背が高くてスタイルが良い。


高級腕時計に、高級ブランドのスーツを身に纏い。
靴を含め、どれもセンスが良い。
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